脳が疲れ情報を処理しきれなかったとき、ながら行動のとき、気持ちが焦ったときなどに、思いもよらないミスをしてしまうことがあります。ヒューマンエラーを防止するには、活動の流れを追って「要因」を見つけ出すことが重要なのです。※本記事は化学系会社にて5年間ISO規格の品質及び環境マネジメント事務局を担当していた尾﨑裕氏の書籍『ヒューマンエラー防止対策』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。

 

時計は11時30分を少し回り、午前中の忙しい時間が過ぎて、昼前の少しヒマな時間帯に入りました。そこであなたは、午前中に扱った書類を整理することにしたのですが、先ほど処理した山崎の通帳の更新に関係する書類に少し違和感を覚えました。おかしいと思い、内容をよく見ると、申請書類の“サキ”の字が、“﨑”となっています。山崎が書いた申請書や本人確認のためにコピーした免許証の記載を見ると、どれも“﨑”となっているのです。この時になってやっと、先ほど発行した通帳のおもてに、間違えた“﨑”の字を印字し発行してしまったことに気付きました。

 

【検討のポイント】

この事例は、行動スリップによるエラーだと考えられます。その原因の1つに、習慣化した動作(作業)は、からだが覚えてしまい、状況が“ズレた”場面でも無意識にそれを行ってしまうということがあります。

 

更に、この時は自分が担当する窓口業務と隣の木村めぐみの新人教育の2つを同時に行ったことも大きな問題です。


これは以前、私自身が本当に経験したことです。自動車を運転していた時のことですが、見通しの良い片側2車線の道路を通行中に、横断歩道に差し掛かかった時でした。信号は自動車側が青信号で、横断歩道の歩道側には数名がいて、彼ら側は信号が赤で青に変わるのを待っていました。

 

私は、そのままのスピードで車を進めたその時です。1人の若者がスマホを片手に早足で進行方向の左手側から横断歩道を渡り始めたのでした。彼は、1車線目の道路を過ぎようとしたところで、異常に気付き慌てて歩道にもどりました。私の方は、道路のセンターライン(中央)側の車線を走っていたのと、歩道まで少し距離があったために、慌ててブレーキを踏んだだけで、幸い事故は起こりませんでした。

 

人は、1つのことに集中しすぎると他のことができなくなる場合があります。脳の処理が1つの事例に集中しすぎると、他の事柄を処理する余裕がなくなります。これらのことを一般に“シングルタスク”とか“ダブルタスク”(“ながら”もダブルタスクの範疇に含むものだと思います)と言います。

 

次ページダブルタスクにもメリットはあるものの…

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