
相続人である子どもに浪費癖があるような場合は、先祖伝来の大切な財産を失ってしまうかもしれません。そんなときは、子どもを飛ばして孫へ受け継がせることも可能です。本記事では「信託」の活用方法について、具体例とともに解説していきます。 ※書籍『資産運用と相続対策を両立する不動産信託入門』から一部を抜粋したものです。税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
子のいない夫婦…浪費癖のある弟には相続したくない
次の事例における家族の課題は次のとおりです。

Aさんは賃貸マンションを1棟保有しており、毎月100万円程度の賃料収入を得ています。Aさんには親族はおらず、死亡した場合、財産を相続するのは妻のBさんです。AさんとBさんとの間には子どもはおらず、Bさんの親族も弟であるCさんしかいません。ただ、浪費癖があるCさんとは、現在は絶縁状態にあります。
しかし、Aさんは自身の死亡後Bさんが相続した不動産が、Bさんの死亡後にCさんに相続されることを避けたいと思っています。子どもがいないので、残されたBさんの生活だけが何とかなれば、それ以降は財産を公益性の高い団体に寄付するなどして、社会の役に立てたほうがCさんに残すよりは有益だろうとも考えています。
■このケースで信託を利用するメリット
① 遺言で指定できるのは自分が死んだ場合の相続の方法についてのみです。相続人の相続については遺言で指定できませんから、Aさんの場合、遺言でBさんに相続させるという遺言を残したとしても、Bさんが死亡したとき「Cさんに相続させない」という遺言をBさんが残していないと不動産はCさんに相続されてしまいます。しかし、信託を利用することによって、Bさんが亡くなった後の財産の帰趨(きすう)、つまり自己の相続人からの相続についてもAさんの意思を及ぼすことができるようになります。
② 第三受益者を公益法人D(出身大学や宗教法人等)とした場合、AさんはBさんの弟Cさんに財産を渡すことなく、信託財産の受益権をDに寄付することができます。