父が所有する土地に、兄と弟がそれぞれ家を構えて暮らしてしました。弟は父の家に暮らし、兄は自分で家を建てていましたが、父が亡くなると、兄の家にはローン残債があり、分筆されていない土地が抵当に入っていることが発覚。弟は土地を半分ほしいと申し出ましたが、兄は返済分を払えば担保を抜くと主張し…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

土地は分筆されておらず、父親の遺言書もなし

「父の生前、遺産について話し合ったことはありませんでした。私と兄が不動産を半分にして、現金は姉たちに…というのが、暗黙の了解だった感じです。実際、姉たちはそれで納得していますし、今回の兄の件はまったくの想定外でした」

 

 

「兄の自宅がまだローンの返済中だということも、父の土地を担保にしていることも、父が亡くなって初めて知りました。想像するに、父はまだ元気で長生きするつもりだったのでしょう。でも、こんなことになってしまって…。ひとことでも教えてくれたら、私も対策を取ることができたのですが」

 

内山さんは打ち合わせの席で、悔しそうに唇をかみました。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

建物が2棟あり、それぞれに住む家族が違う場合、もっと早い段階で分割の準備が必要だったといえます。兄が自宅併用アパートを建てる段階で、きちんと分筆をすませて別々の土地としておき、担保もその土地だけにしておけば、こういった問題は防げたはずなのです。そのうえで、父親に「利用に合わせて相続させる」とする遺言書を残してもらえば、争いにはならなかったでしょう。

 

筆者もこの件について手を尽くしましたが、残念ながら兄の賛同は得られず、申告期限までに話し合いでの着地は見込めませんでした。そのため、とりあえず未分割で相続税の申告をすませましたが、その後、兄は弁護士を立て、家庭裁判所の遺産分割協議の調停の申し立てをしてきました。あくまでも土地を全部相続するという主張です。

 

内山さんからすれば、両親と同居して面倒を看てきたことを度外視する兄の主張はあまりに理不尽なことでしょう。しかし筆者は、現状のままで兄の弁護士に勝つことはむずかしいと判断し、内山さんも弁護士立てるようお勧めしました。

 

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本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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