新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は激変している。景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

これが多くの会社での日常です。でもそれぞれの社員が一日本当に与えられたタスクをやり遂げているのか、実際の進捗はどうか、もちろん今現在気になっているプロジェクトやタスクについては、日中に担当の社員を呼んで逐一確認をしているかもしれません。ところが、その陰に隠れて「あれ? 君、そこにいたんだっけ」と思ってしまう社員がいるのも事実。その社員も、5時にさっと帰ってしまうと管理者の頭にもなんとなく残らない。数日経過してからそういえばあいつ、といったことになっていることが多いのではないでしょうか。

できると思った社員はお調子者だった!?

でもテレワークにすると、その日の成果が夕方には各管理者のもとに報告という形で上がってきます。管理者も社員一人一人の一日の働きぶりが把握できていない分、夕方の報告には慎重に目を通すようになります。その結果「なんだ、何にもできてないじゃないか」だとか「このやり方ではぜんぜんだめだ、軌道修正しなきゃ」など、多くのことに気づかされるようになりました。また時間内で社員がさぼっている場合、社員が思っている以上に管理者側からはっきりわかってしまうことにも、多くの管理者が気づかされたと言います。

それまでは真面目でコツコツやるタイプだとか、会議では威勢よく発言していたとか、上司には気遣いが上手、などと褒められていた社員が意外にもテレワークにしてみると「ぜんぜんわかっていない」「資料の一つも満足に作れない」などなど、思ってもみなかったことがわかってしまうというような結果になっているということです。

いっぽうで、地味で根暗で社員の評判はイマイチだった社員がテレワークで与えたタスクに対しては正確に時間通りに出す、それだけでなくネット上であれば、ものすごく的確に雄弁に提言もするなど、社員の隠れた能力に気づかされたとの声も多く聞かれました。

テレワークによって一日の業務を明確にし、社員一人一人に対してオフィスではない自宅という空間で取り組ませることによって、社員の能力を別の角度から測ることができるようになったのです。

社員の側からしても今まではオフィスで仕事をしていても、雑音や電話音、社員の話し声などで集中できなかったのが、一人で仕事に向かい合うことで成果を出しやすくなった、という声も多く聞かれました。

結果として会社から見れば、思いもかけなかった社員の出来が良く、出来が良いと思っていた社員がただのお調子者だったなどという新たな発見があったというのが、このテレワーク全国一斉お試しキャンペーンの結果、判明したことなのです。

 

牧野 知弘
オラガ総研 代表取締役

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