「駆除すべき対象としてしか見ていなかった生き物に対して、ネズミさんたちと呼びたくなるほどに親しみを感じている」「解き明かして得たネズミさんたちの習性が、今後のドブネズミ駆除に役立つのであれば、私にとってこれ以上喜ばしいことはない」――ネズミ捕獲のプロ・山﨑收一氏は書籍『捕獲具開発と驚くべきネズミの習性』(幻冬舎MC)で、そう語っています。

二段階ロック成功か…?すし屋に設置したら事件が!

ネズミが捕まったという連絡を受けて見に行くとドブネズミが捕獲されて中で死んでいた。ものすごい腐臭で、持ち返ったあとの箱の洗浄には閉口した。飼育員がウサギ小屋に入った時に、ドブネズミがあわてて捕獲具に入り捕獲できたので、ドブネズミがハツカネズミのようにシーソーの動きを気にしないかどうかは不明である。

 

しかし、長いしっぽがあっても2段階ロックの仕組みがうまく機能していることが確認できた。つまり、しっぽが外に出ていても1回目のロックで外に出られなくなったことが確認できた。

 

その後、クマネズミが生息する、自宅近くのすし屋で設置し捕獲を試みた。この時、捕獲できなかったのに中のパンが全て食べられる事件が起きたのだ。

 

食パン1枚を最も奥の位置に立てて置いていたのだが、入り口が開いたままで中のパンだけがきれいになくなっている。パンがあった場所にパンの屑は落ちていなかった。まさに事件である。

 

ハツカネズミのようにシーソー板を苦にせず、乗り越えて中のパンを食べたのであれば当然捕獲できるはずである。長いしっぽが外に出ていてもロックできる仕掛けで、ドブネズミは捕獲できているのにクマネズミでは捕獲できていない。

 

仕掛けを分解してみて驚いた。中の金属板の側面に足跡がいくつも残っていたのだ。このことから、クマネズミは足元が急に不安定になる事を極端に嫌うことが分かる。

 

では、シーソー板を傾けないでアクロバットのように足を踏ん張って1枚のパンをきれいに食べたのだろうか? 食パンは3日もすると乾燥して誘引効果が落ちてくると考えていたので、遅くとも設置して3日後には点検に行っている。

 

この場合、無理な態勢を維持しながら、1匹が3日以内に食パン一枚を食べたのであろうか、それとも、すぐに他のネズミが学習して、交代で食べたのであろうか?

 

この点についてはずっと謎のままだったが、最近になって別の可能性が浮上した。別の仕掛けを用いて捕獲を試みた時に観察した事である。餌付けを行っている時に、奥に置いてあった2分の1枚の大きさの食パンが外に持ち出されているのを、たまたま確認することができた。中で食べるより外に持ち出すことができるなら、その方が安心して食べることができるだろう。

 

この場合、シーソー板を傾けずに時間をかけてでも食パン1枚を外に持ち出したと考えるのが最も妥当だと今は考えている。

 

いずれにしても、クマネズミの行動には驚かされる。

次ページクマネズミ、どこまで不安定な状況に耐えられるのか…

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