仲の良い家族でも、お金が絡むと人は変わるもの。相続にまつわる争いは絶えません。そのようなトラブルを他人事と思わずに、事例から相続対策を学ぶことが重要です。今回は、編集部に届いた医療費にまつわるトラブルについて、相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の戸﨑貴之税理士が解説します。

長生きしてほしい…親思いの長男、先進医療を選択

長女と次男は、遠く離れて暮らしていたので、入院中のMさんの面倒をみていたのは、主に長男。医師からの色々と説明を聞いては、きょうだいたちに電話して伝えていました。

 

ただ入院した時点で病気はずいぶんと進行していて、医師から余命宣言をうけたとか。それでも懸命に治療を行なったMさんは、余命宣言よりも長く頑張りました。Mさんが旅立ったのは、入院から8ヵ月後のことでした。

 

大切な子どもたちに見守れて逝ったMさん。しかしそのあと、子どもたちは大ゲンカを繰り広げます。それは葬儀が終わったあと、長男が「話がある」と長女・次男に集まってもらったときのことです。

 

長男が二人に切り出したのは、母の入院費・治療費についてでした。その額を聞いて、二人は驚愕。

 

「500万円って、どういうこと?」

 

先進医療をうけたことで、医療費が跳ねあがっていたのです。何も聞かされていなかった2人は「なんで先に言ってくれなかったのか」と猛反発。

 

「母さんには、最高の医療をうけさせたかった。それとも、母さんには早く死んでほしかったというのか」と応戦する長男。そして長女と次女にも、医療費を払うように迫ったのです。

 

「相談なしで決めて、そんな大金、ないわよ」と長女は断固拒否。次男もそれに続きます。「お前たちは母さんの相続人なんだから、債務だって負わないといけないないだろ。今回の医療費だって、3人で三等分だ」と長男。ひとまず、病院への支払いは長男だけで済ませましたが、その負担をどうするか、きょうだいの間で話はまとまっていません。

解説:兄は「支払い済みの医療費」を請求できるのか?

本来、遺産分割の対象は、積極財産となり、債務は、相続分に応じて自動的に分割され、相続されます。そのため、債権者である病院は、各相続人に対して、医療費の法定相続分を請求でき、その支払を拒否できないというのが法律上の一般的なお話となります。

 

しかし、実務では債務を遺産分割の対象としています。

 

遺産分割協議で債務負担者を決定することは、債権者に対しては主張できませんが、共同相続人の間での取り決めは有効となります。

 

たとえば、相続人間での負担割合の協議が確定し、債権者への支払後に、相続人の間で精算(求償)することは有効です。

 

しかし、今回は、相続人間での分割協議確定前に長男が支払済のため、長男は他の相続人に対して医療費を請求できません。

 

高額な債務が生じる場合には、相続人の間で負担方法や取り決めを事前に定めることがトラブル回避の有効策になるのではないでしょうか。

 

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    ※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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