
「毎年検査しているし、自分の目は大丈夫」。そんなふうに思い込んではいませんか? 人間ドックや健康診断などでできる目の検査は非常に限られています。「異常なし」と診断されていても、実は怖い病気を見逃してしまっている可能性があります。年間1500件の白内障手術を手掛けるスゴ腕ドクター佐藤香氏が解説する本連載。今回のテーマは「人間ドックや健康診断でわかること、わからないこと」です。※本記事は、アイケアクリニック院長の佐藤香氏の語り下ろしによるものです。
人間ドックや健康診断でできる「目の検査」は限定的
多くの人は、1年に1回は人間ドックや職場の健康診断を受けているかと思います。その際、同時に目の検査もいくつか受けることになりますが、身長や体重、聴力の検査などのわかりやすい検査とは異なり、何を調べているかよくわからないというのが本音ではないでしょうか。
それなのに、「特に異常を指摘されたことはないから、自分の目は大丈夫」と安心してはいませんか? 決して油断してはいけません。人間ドックや健康診断では、目の情報はごくわずかしかわからないからです。
本記事では、人間ドックや健康診断で行われる目の検査はどのようなものなのか、また、その診断結果だけで安心してはいけない理由について、眼科医として詳しく解説したいと思います。

異常なしでも油断大敵…怖い病気を見逃している可能性
人間ドックや健康診断で行われる目の検査としては、まず「視力検査」があります。近視や遠視、乱視がないかを確認します。また、すでにそういった症状があり、メガネを使っている方の場合は、その度数が適しているか否かを確認します。
この検査をしても視力が悪い場合は、目の中に病気が潜んでいるか、使っているメガネが合わないかのどちらかが考えられます。必ず眼科を受診して、より詳しく検査する必要があります。人間ドックや健康診断で異常が見つかった場合でも、そこでは詳しくしらべてもらうことはできないので、必ず眼科に行きましょう。
よく行われる検査として、ほかには、目の硬さを調べる「眼圧検査」があります。目に向けて風をプシュッと放つ、おなじみの検査です。苦手な方も多いのではないでしょうか。
眼圧の正常範囲は、だいたい10~20mmHg(ミリメートル水銀柱)といわれています。それ以上の数値だと、「異常眼圧」という指摘を受けることになります。眼圧が高くなる病気の代表格は「緑内障」です。放置すれば失明の危険もある怖い病気ですから、眼圧が高い場合は「眼科で詳しい検査を受けてくださいね」と言われます。
しかし、実は日本人の場合、眼圧が正常でも目の神経がダメージを受けてしまう「正常眼圧緑内障」にかかりやすいため注意が必要です。人間ドックや健康診断で眼圧を調べただけで自分に緑内障はないと安心していたら、気が付かないうちに失明寸前まで進行してしまっていたという事態も起きうるのです。もし検査結果で眼圧の値が正常でも一度は眼科で検査することが非常に重要です。油断してはいけません。
また、他には、目の写真を撮る「眼底写真」という検査があります。網膜の写真を撮り、網膜の状態、網膜の血管の状態、目の神経の状態を評価します。ただし、写真で評価するだけなので表面の状態しか確認できません。
眼科で使われる「OCT」とよばれる検査機器であれば、3次元で画像を解析できるので、より詳細に調べることができます。異常や病気の早期発見、早期診断が可能になります。
眼底写真では異常がなかったからといって安心してしまうと、怖い病気を見逃してしまう可能性があるため、やはり必ず一度は眼科で検査することが大切です。
以上のことから、人間ドックや会社での健康診断で行われる目の検査はごく簡易的なものであり、目の異常を見逃してしまう可能性が高いことがおわかりいただけたかと思います。
何らかの自覚症状がなくても、人間ドックや健康診断では異常なしと言われていても、年に1回は眼科や眼科ドックで検査するほうがよいでしょう。
【動画/スゴ腕ドクターが徹底解説! 人間ドックや健康診断では見抜けない目の異常】
佐藤 香
アイケアクリニック 院長
アイケアクリニック銀座院 院長