2019年に厚生労働省が発表した人口動態統計月報年計(概数)の概況によると、2018年の出生数は91万8,397人となり、調査開始以来の過去最少の数値を記録しました。一方で、同年における65歳以上の人口は3,515万人。総数の27.7%にものぼります。まさに「超少子高齢化」が進む日本ですが、それに伴い深刻化しているのが「空き家」問題です。本記事では、我が国における「空き家」の実態を解説します。

増える空き家、荒廃するマンション

統計上で世帯の数は増えているとはいえ、日本の人口は確実に減少しています。一方で、それまで更地だったところに戸建て住宅やマンションが建築されているのを見かけることも多いのではないでしょうか。すでにある住宅ストックに加えて、新規の着工が続いたら、空き家が増えるのは当然です。こうした空き家の問題は、2014年に発表された「住宅・土地統計調査」で大きく注目され始めました。

 

本調査は総務省から5年ごとに発表されますが、2013年のデータをもとに割り出した空き家の数は実に820万戸に達しました。日本の世帯数が約5245万世帯のところに住宅の数は6063万戸ですから、1世帯当たりの住宅数は約1.16という計算になり、空き家率は13.5%になります(下記図表2)。

 

[図表2]世帯数の変化と空き家率 (注)世帯数には、親の家に同居する子ども世帯等(2013年=35万世帯)を含む。 総務省 住宅・土地統計調査「住宅ストック数と世帯数の推移」より
[図表2]世帯数の変化と空き家率
(注)世帯数には、親の家に同居する子ども世帯等(2013年=35万世帯)を含む。
出所:総務省 住宅・土地統計調査「住宅ストック数と世帯数の推移」より

 

近年の空き家の推移を見ても、じわじわと上昇してきており、1000万戸を超える日も近いと推測されています。この空き家の問題は、統計上の問題だけでは片付けられないさまざまな要因が絡んでいます。

 

そもそも戦後の日本は420万戸の住宅不足の状態から出発しており、国策として政府が住宅の建設を積極的に後押ししてきました。「1世帯1住宅」や「1人1室」などの目標を掲げて積極的に住宅の建設が進められ、1973年時点での調査では全国レベルで量的な不足は解消されたのです。

 

その後、バブル崩壊以降の地価下落などの問題がありますが、その間も新設住宅の着工は続き、今度は空き家の問題が深刻化してきたのです。

 

一言で空き家といっても種類があります。総務省の調査によれば「賃貸用や売却用の住宅」で一時的に空き状態にあるもの、別荘などの「二次的住宅」、そして長期にわたって空き状態にある「その他」に分けられます。賃貸の物件には、性質上どうしても空き家・空き住戸(空き室)になる期間が発生しますが、近年増えているのは「その他」の部分であり、全体の38.8%にも及んでいます。

 

空き家がなぜいけないのかといえば、住み手を失うと、一気にあちこちが古びて屋根や壁の一部が剝がれて崩壊しやすくなることや、築何十年も経っている木造建築では、万一火災が発生すればあっという間に燃え広がってしまう危険もあるからです。

 

また古い建物には、RC共同住宅の場合も含めて現在の耐震基準を満たしていないものや耐震補強工事すらしていないものも多く、大きな地震が起こればひとたまりもありません。それ以外にも、空き家・空き住戸には不審者が入り込んで犯罪の温床になったり、衛生面の悪化や景観を損なったりという一面もあります。

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これからのマンションに必要な50の条件

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熊澤 茂樹,安井 秀夫

幻冬舎メディアコンサルティング

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