年金受給者が亡くなると、受給停止の手続きが必要です。しかし手続きは煩雑で、年金の種類によっては手続き期限が非常に短いという難点もあります。ここでは、故人の年金の受給停止や、遺族に支給される年金等の手続きの方法を解説します。※本連載は、社会保険労務士・川端薫氏、税理士・内田麻由子氏監修の『家族が亡くなった時の相続・年金・保険などの手続き』(税務研究会出版局)より一部を抜粋、再編集したものです。

大黒柱が死亡…遺族が受け取れるお金は?

■遺族基礎年金の手続き

 

遺族基礎年金は、下記の4つの要件のうち、いずれかの要件に当てはまる方が亡くなられた場合、亡くなられた方によって生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が受け取ることができるものです。

 

「生計を維持されていた」とは、亡くなった方と生計を同一にしていた方で、原則として年収850万円未満の方が該当します。おおむね5年以内に、定年退職などによって年収850万円未満になる場合も含みます。

 

また、年金法上の「子」とは、亡くなった時点で18歳に到達する年度末までの子ども、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子どものことを言います。つまり、「生計を維持されて」いても子どものいない妻は受け取ることはできません。

 

【遺族基礎年金の受給条件(亡くなった方の要件)】

(1)亡くなった方が国民年金の被保険者であった場合。

(2)亡くなった方が国民年金の被保険者であった60歳以上~65歳未満で、日本国内に住所を有していた場合。

(3)亡くなった方が老齢基礎年金の受給権者だった場合。

(4)亡くなった方が老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上あった場合。

 

遺族基礎年金の受給額は図表6の式で計算されます。

 

[図表6]遺族基礎年金の受給額の計算式

 

たとえば、遺された家族が配偶者と受給条件を満たす子ども3人だった場合、78万1,700円+(22万4,900円+22万4,900円+7万5,000円)で年額130万6,500円となります。

 

※上記金額は2020年度の金額です。

 

遺族基礎年金は手続きをしなければ受け取れません。受給資格を満たしている場合には、図表7の必要書類を添えて住所地の市区町村役場に提出します。死亡日が国民年金第3号被保険者期間中の場合は、年金事務所または街角の年金相談センターになります。図表7の必要書類を添えて年金請求書を提出します。

 

★印の書類はマイナンバーを記入することで添付を省略できます。
[図表7]遺族基礎年金の必要書類 ★印の書類はマイナンバーを記入することで添付を省略できます。

条件次第で受け取れる「寡婦年金」「死亡一時金」

遺族基礎年金を受け取れない場合でも、「寡婦年金」や「死亡一時金」を受け取れる場合があります。

 

■寡婦年金

 

寡婦年金は、国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間(免除期間を含む)が10年以上ある夫が亡くなった場合で、婚姻期間が10年以上あり、生計を維持されていた65歳未満の妻が受け取ることができます。受給期間は妻が60歳以上65歳未満の間です。

 

受け取れる年金額は、夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の4分の3の額です。

 

なお、すでに夫が老齢基礎年金を受け取っている場合と妻が老齢基礎年金を繰り上げ受給している場合には支給されません。

 

■死亡一時金

 

死亡一時金は、亡くなった方が国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた月数が36ヵ月以上あり、老齢基礎年金・障害基礎年金を受け取っていない場合に支給されます。

 

対象となるのは、亡くなった方と生計を同じくしていた遺族で、優先順位の最も高い人が受給できます(図表8参照)。

 

[図表8]死亡一時金の優先順位

 

死亡一時金の額は、保険料を納めた月数に応じて12万円~32万円です。付加年金の付加保険料を納めた月数が36ヵ月以上ある場合は、8,500円が加算されます。

 

*付加年金

 

国民年金の第1号被保険者が付加保険料(月額400円)をプラスして納付すると、老齢基礎年金に付加年金が上乗せされる制度です。なお、遺族が、遺族基礎年金の支給を受けるときは支給されません。

 

寡婦年金を受ける場合は、死亡一時金か寡婦年金かのどちらか一方を選択します。死亡日の翌日から2年が経過すると、時効により死亡一時金を受ける権利はなくなります。

 

 

川端 薫

社会保険労務士(東京都社会保険労務士会足立荒川支部所属)

 

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