2025年には、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になります。30~50歳の子どもたちが直面する「親の介護」問題は、深刻化していく一方です。本記事では、地域福祉の発展に貢献する社会福祉法人洗心福祉会の理事長・山田俊郎氏の書籍『利用者満足度100%を実現する 介護サービス実践マニュアル』(幻冬舎MC)より一部を抜粋して解説します。

「迷惑をかけずに家で暮らしたい」Kさんの願いは…

そのころの地域ケア会議では、退院に向けての対策をテーマに話し合いました。Kさんは「迷惑をかけずに家で暮らしたい」という希望を持っており、私たち地域包括支援センターも見守りを継続しました。病院からは「市町村のネットワークを構築していく必要がある」、民生委員は「地域住民へ説明をする」などの声が上がり、連携の形ができあがりました。

 

退院後の今でも定期的に民生委員と連絡を取り合い、状況確認を継続しています。加えて、Kさんや娘さんに電話で状況を聞き、相談に乗るアプローチも続けています。

 

地域包括支援センターが間に入り、家族、病院、民生委員、警察、自治会(自治会長)の連携をスムーズにすることで、どんなに問題を抱えていても「困ったら施設へ入所してもらう」ではなく、本人の希望どおり在宅生活が送れるようになると実感しました。

 

[図表3]地域のネットワーク
[図表3]地域のネットワーク

 

◆「病を抱えながら自宅で過ごしたい」

 

【ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の在宅介護】

 

■緊急連絡先を把握しておく

■緊急事態が起こった際の対応策を家族・本人と話し合う

■身体の動きや表情だけでなく、想像力を働かせる

 

 

◆「病を抱えながら自宅で過ごしたい」利用者の思いを叶えるために――津中央ヘルパーステーションの事例

 

在宅介護を利用する人のなかには、がん、老衰、身体の不自由な方などさまざまな方がいます。そのため、病気への知識を深めながら少しでも苦しみをやわらげ、最適なケアをしなければなりません。中でも、難しかったのが、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の利用者です。

 

ALSとは、特定疾患の中に定められている難病の一種で、手足の筋力低下、嚥下、構音障がいの発症が多く、身体全体の筋力が低下する病気です。8割の患者は発症後5年以内に死亡するといわれており、球麻痺のため、人工呼吸器の装着が必要となります。

 

妻と2人暮らしの利用者・Oさんも、ALSを発症し、自宅で療養していました。当初は、2時間支援を週2回実施、ホームヘルパーを2人派遣して、食事介助や口腔ケア、排泄ケアを担当しました。

次ページ「緊急時でも救急車は呼ばない」Oさんの最期は…

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