2025年には、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になります。30~50歳の子どもたちが直面する「親の介護」問題は、深刻化していく一方です。本記事では、地域福祉の発展に貢献する社会福祉法人洗心福祉会の理事長・山田俊郎氏の書籍『利用者満足度100%を実現する 介護サービス実践マニュアル』(幻冬舎MC)より一部を抜粋して解説します。

娘がいないことにKさんは酷く絶望していた

Kさんは、娘さんの不在を憂い絶望感に見舞われて「死ぬしかない」と繰り返します。ときには「自宅に火をつける」といい出すこともあり、警察や消防が出動することもありました。それを受けて、民生委員は地域住民の苦情を伝えてきます。

 

地域の人々や医師は「放火の危険を感じている。何かあってからでは遅い。どこかに入院させることはできないのか」といっているのです。

 

[図表1]孤立状態に陥っていた
[図表1]孤立状態に陥っていた

 

娘さんに事情をうかがうと「母は病院で心の病気といわれた。本人も私が家を出ることは納得していたのに、朝になったらまた騒ぎ出す。どうしたらいいのか分からない」といいます。たびたび連絡をとって事情を聞いていたのですが、だんだんと連絡がとれないことが増えてきました。

 

◆関係機関と連携、情報共有をして対応策を検討する

 

状況判断ができたところで、私たちは市に相談、同時に病院にも相談をしました。また、民生委員と連携をして地域住民からの苦情の受けつけも開始しました。かなり難しい例だったので、関係機関の情報共有と今後の対応についての検討が必要と感じ、定期的な「地域ケア会議」を開催することに決めました。

 

1回目の会議では、何かリアクションがあれば各関係機関に連絡、相談をすることを徹底し、夜間のトラブルには、警察→保健所→病院へつなげる体制をつくることにしました。

 

その後、深夜に警察より地域包括支援センターに電話をいただき、Kさんの自宅を訪問すると、家の中からは叫び声と大きな物音が。声をかけてはみますが、おさまらないのです。

 

それでも諦めずに声をかけ続けるとようやく落ち着かれ、その後、病院に診察を依頼しました。深夜ということもあり「緊急性が低ければ、翌朝、受診をするように」といわれてしまったのですが、地域住民の不安も強く、本人も家で過ごせる状況ではありませんでした。結局、その夜は私たちの施設へ泊まることになりました。

 

[図表2]地域で支える協力体制ができる
[図表2]地域で支える協力体制ができる

 

翌朝、改めて、警察と病院を受診し、担当医より家族への連絡後、入院をすることになりました。

次ページ「迷惑をかけずに家で暮らしたい」Kさんの願いは…

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