理想の経営を目指すためには余裕を持った資金が必要である。さらには、会社を育てていくために、本業とは別にもう一つの定期的な収入源があれば、少なくとも生活していく分には安心だろう。「真面目で一生懸命頑張っている経営者」こそ不動産投資の恩恵は十分に受けられる――自身も投資家である曽我ゆみこ氏はそう語る。経営者に特化した初心者のための不動産投資のポイントをわかりやすく解説する。本連載は、曽我氏の著書『経営者のための初めての不動産投資戦略』(プレジデント社)から一部を抜粋した原稿です。

確定申告における白色申告、青色申告のおさらい

確定申告についても、簡単に説明しておきましょう。不動産投資などの副収入がない給与所得者であれば、基本的には会社が行ってくれる年末調整で済みますが、賃貸業で収入が入ってくると、1〜12月の収支を申告する必要が出てきます。これを確定申告といい、基本的には2月中旬〜3月中旬に税務署に必要書類を提出します。この申告をもとに、税金を納めたり、逆に還付金を受け取ったりします。

 

この確定申告には、白色申告と青色申告があります。

 

白色申告は、最も簡素な書類で済むものになりますが、一方で特別控除がなく、家族への賃金が経費として認められる専従者給与という仕組みが利用できず、赤字を翌年以降に繰り越すこともできません。

 

なお、白色申告で提出する書類の基本は、国税庁のウェブサイトからダウンロードできる確定申告書Bと収支内訳書、控除証明書類です。

 

事前に事業者としての登録が必要な青色申告は、複式簿記をつけることによって、65万円の特別控除が受けられます。一方で、白色申告と同様に、簡素な帳簿付けのみの場合は10万円の特別控除にとどまります。

 

青色申告のメリットはほかにも青色専従者給与という仕組みが使えるため、従事した期間に則った家族に対する給与を経費として認められること、そして赤字を翌年以後3年にわたって繰り越せる(逆に前年の黒字に繰り戻して前年の税額の還付を受けることも可能)ことがあります。

 

ただし、この青色申告者になるためには、購入後、一定期間の間に青色申告申請手続きをする必要があります。青色申告で提出する書類の基本は、確定申告書Bに加え、損益計算書、貸借対照表、青色申告決算書、控除証明書類です。

法人、資産管理法人を設立するメリット

確定申告は個人で行うべきもので、それとは別に資産管理法人を設立する場合には、決算が必要になります。それに伴い、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表、計算書類に関する付属明細書、事業報告書(それに関する付属明細書)などが必要になります。

 

加えて、法人を設立する場合、登録免許税や謄本交付手数料、公証人手数料といった数十万円規模の設立コストもかかります。決算に関する税理士への報酬などもかかります。

 

つまり面倒で、お金もかかるということです。そうした手間を考えたときに、資産管理法人は誰もがやみくもに設立したほうがいいというわけではありません。

 

当然のことながら、金銭的なメリットが得られる状態の人が考えるべき選択肢です。個人と法人で最も異なるのは税率です。個人の場合、最高税率は2020年現在では55%となっています。収入が多いほど税金が高くなり、損をしてしまうということです。

 

一方で法人の場合は、最高税率(法人実効税率)は2020年現在約30%です。ですから家賃収入と、他の所得の合計が大きい場合(おおむね所得の合計が1000万円以上)に、法人化したほうが節税になるといえます。

 

ほかにも、資産管理法人を設立するメリットはあります。まず給与のコントロールができることです。資産管理会社の給与をパートナーや両親に振り分けることで、税金をうまく軽減することが可能になります。

 

たとえば自分の給料は、本業のほうで800万円をもらっていたとします。それに資産管理法人からの給与として800万円を加えたら、1600万円の給与になってしまい、税金を相当負担することになります。

 

それならば、資産管理法人の給与は200万円を自分に、パートナーには600万円を振り分ければ、トータルの税金は少なくなります。もちろんその給与は、法人の経費となります。本業をお持ちの場合、わざわざ別の法人をつくらなくとも、すでに経営している会社でやればいいのではないかと思います。

 

しかし、融資の鍵をにぎる金融機関は、本業と不動産業の事業をまぜることを嫌います。本業は本業、不動産業は資産管理法人と分けたほうが信用されやすい傾向にあります。なぜかといえば、不動産投資は別のあまたある業種に比べて、借入金の割合が大きいからです。決算書のバランスが崩れて、本業のほうの実態が見えにくくなるということです。

 

また、本業のほうでパートナーや家族に対して、給与を多く支払うというのは、従業員のモチベーションを下げてしまう可能性も否定できません。その意味でも、資産管理法人なら、気を使う必要がないので両親、義理の両親、子どもなど、複数人に給与を分散できる可能性があります。

 

さらにお勧めなのが、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)です。1年以上事業を継続している中小企業であれば、月額5000〜20万円を、積み立てることができ、積立総額は最大で800万円まで認められています。この掛け金もすべて損金扱いにできます(最大、年間240万円まで経費扱いできるということ)。

 

なお、この資産管理法人は、人によってはあえて赤字にする(戦略的に赤字経営をする)という人もいるかもしれませんが、本業の足を引っ張らないためにも、黒字にしておくべきでしょう。

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