新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

意外な業種が倒産する不動産バブルの崩壊

同様に放送局も日本テレビは麴町に、TBSは赤坂に居を構えていましたが、移転したり再開発を行なうことで、徐々に不動産収益に依拠するようになっています。

 

牧野知弘著『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)
牧野知弘著『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)

都心部の容積率が上昇したことを受けて、各社は一斉に本社ビルの建て替えなどの再開発に走りました。そして本社機能は一部に留め、賃貸フロアを設けて多大な賃貸収益を稼ぐようになったのです。

 

彼らは今や「都心のビルオーナー」に成り代わってしまったのです。不動産の悪口を書くことは自らの首を絞めることになります。筆が鈍るのも、うべなるかなというわけです。

 

同じような現象は大手出版社にも見られます。文京区の音羽に本社を構える講談社、神保町に本社がある小学館なども大型のオフィスビルを併設してテナントに賃貸しています。出版不況といわれますが、実はちゃっかり不動産収益を飯のタネにしているのです。

 

最近は、学校法人でも賃貸オフィスビルを持つところが増えています。特に都心部に多くの不動産を抱える学校法人は、別会社形態でオフィスビルを所有しています。学校経営は少子化の影響もあり必ずしも順調なところばかりではありませんが、彼らが都心に所有する不動産は、本業以外の収益として経営を支えているのです。

 

さてこうした副業としての不動産経営を行なっているところでは、ビルの開発のために借入金を膨らませているところもあります。また彼らは必ずしも不動産経営のプロではありませんので、今後オフィスビル市場がテナント獲得を巡って大戦争が勃発したときに、競合に負けてしまう可能性もあります。

 

それでも本業が盤石であれば問題はないのですが、頼みの不動産経営に行き詰まると経営基盤自体が大きく揺らぐところも出てきそうです。

 

平成バブル崩壊時は、不動産業とはまったく関係のない多くの法人で、多大な借入金を抱えて倒産を余儀なくされるところが頻発しました。住専と呼ばれる農林中金系の金融機関が経営難に陥るなど、世間の目からすれば奇異に映るような現象が見られました。

 

そうした意味で今回、バブル崩壊が現実となった場合、またぞろ「意外な銘柄」が登場してくる可能性も否定はできません。いずれにしても、平成バブル時とは不動産プレーヤーの顔ぶれはずいぶんと変わってくるものと予想されます。

 

牧野 知弘
オラガ総研 代表取締役

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