銀行のビジネスを成立させている、統計学の「法則」とは?

銀行には、日々多くの顧客が入出金に訪れています。顧客の預貯金も、予告なく突然引き出されることがあります。しかし、銀行にとっては織り込みずみで、そのうえでなお、大規模な事業への融資を行うなどして、収益を上げています。じつは、銀行がこのようなビジネスを遂行できるのは、統計学の「ある法則」が働いているからなのです。経済評論家で、自身もメガバンク出身の塚崎公義氏が、銀行のビジネスを成立させる「法則」について、初心者にもわかるよう平易に解説します。

銀行の金庫には「少しの現金があれば大丈夫」なワケ

皆さんご存じのように、銀行は預金者から預かった金を利用してビジネスを行っています。預かった金は一部だけを金庫に入れて、あとは貸し出すために使っているのです。「預金者がいつ引き出しに来るかわからないから、預かった金は金庫に入れておく」ということでは、貸出金利を稼ぐことができず、保管費用だけがかかるので、銀行は破産してしまいます。

 

預かった金の一部だけ金庫にしまい、それ以外を貸す、というビジネスが可能なのは、

 

●預金を預けに来るのは顧客の100人に1人の割合

●預金を引き出しに来る顧客も100人に1人の割合

●つまり、大勢の客がいれば、預けに来る客と引き出しに来る客は大体同じ数になるはず

 

という「大数の法則」をもとにした考え方ができるためです。

 

大数の法則というのは統計学の一種で、簡単に説明すると、なにかを予想するとき、1回ずつを正確に予想するのはむずかしいけれども、多くのケースが集まってくると安定した一定の結果がでてくる、という定理です。

 

コインを例に考えてみましょう。コインを投げて表が出る確率は1/2ですが、人数が少ないと確率通りになるとは限りません。10人がコインを投げても、表が出るのは5人とは限らず、6人や7人になる可能性も高いです。しかし、1万人がコインを投げると、表が出る人数は大体5000人になり、6000人や7000人になる事は滅多にありません。この定理が大数の法則です。

 

これを銀行に置き換えると、100万人の預金客がいたとして、だいたい1万人がお金を預けに来たとすると、だいたい1万人が預金を引き出しに来る、ということです。

 

もっとも、例外もあります。取り付け騒ぎです。「あの銀行は危ない!」という噂が流れると、大勢の預金者が一斉に預金を引き出そうとするため金庫が空になり、倒産してしまう可能性があります。

経済評論家

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と無関係に個人として行なっているものであるため、現職欄には経済評論家と記すものである。

著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。

趣味はFacebookとブログ。

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