学習意欲やチャレンジ精神には「自己肯定感」が不可欠です。自己肯定感がどう育つかは「親次第」、つまり家庭での教育が重要です。開成中学校・高等学校の校長を9年間務めた筆者が、思春期の男の子の「自己肯定感」を高め、その子の能力を開花させる方法を紹介します。※本連載は、東京大学名誉教授の柳沢幸雄氏の著書『男の子の「自己肯定感」を高める育て方』(実務教育出版)より、一部を抜粋・再編集したものです。

上手にアドバイスするための「イエス、バット構造」

お伝えしてきたように、ただ「ダメ」と言うだけでは、子どもの中には何も残りません。「Aのどの部分がよくて、どの部分がダメだったのか」、または垂直比較を用いて「これができるようになった。でもこうするともっとよくなる」という伝え方ができれば、「こんなふうに工夫して、続ければいいんだ」と考えることができます。

 

普段の生活の中で、自分で考えて行動したことに対して、ダメ出しばかりされるとしたら、「もうやらなくていいや」と思うようになるものです。

 

良い部分を伝えた後に、改善点を伝えるアドバイスの仕方であれば、子どもは気持ちよく受け入れることができます。私は、この言い方を「イエス、バット(Yes, But)構造」と呼んでいます。

 

息子がまだ小さかったとき、母の日のために幼稚園で描いた絵を私に見せに来たことがありました。頑張って母親の顔を描いているのですが、背景は白いままです。「うまいね。でも、背景を塗ったらもっとカッコよくなるよ」。

 

すると次に父の日のために描いた絵では、背景が塗られていました。「お、背景を塗ったんだね。カッコよくなったな。今度は髪の毛をちゃんと見て描いたら、もっとよくなるよ」。こんなふうに、まず褒めてから、1点だけアドバイスをするのです。

 

大切なのは「1点だけ」というところ。2つも3つも言われたのでは、子どもは改善する気を失ってしまいますし、頑張ってもできなかったら自分にがっかりしてしまうかもしれません。そうならないためにも、アドバイスは1つにとどめます。それを改善してきたら、その頑張りをしっかり認めてあげる、というプロセスを踏むのがいいのです。

 

イエスの部分はどんなに長くても構いませんが、バットの部分は短く1つ。長い注意は頭に残りませんし、子どものやる気を奪うからです。アドバイスが必要ならば、この「イエス、バット構造」を使ってください。

 

親がこのような伝え方をしていると、子どもも同じように他人に接することができるようになります。常に、相手の良い部分を見つける。意見には反対でも、まず相手を認めてからにする。このような「加点法の価値観」は、人と協力して何かを成し遂げるためにも、円滑な人間関係を育むためにも必要な要素です。

「7割できれば褒める」ことが重要

親の基準で子どもを見ると、子どもがしていることは、完璧からはほど遠く、改善点はいくらでも見つかります。それはきっと、夫婦関係でも同じでしょう。例えば、ご主人が掃除をしたとき。あそこにごみが残っている、こっちに埃が残っている、と奥さんは気になって仕方ないかもしれません。「なんで四角い部屋を丸く掃除するのよ!」などと言われると、あっという間にご主人はやる気を失います(笑)。このような減点法では夫は育ちません。

 

息子育ても、夫育ても、部下を育てるためにも大切なことは、「7割で満足する」ということです。自分ができることを人にさせるわけですから、完璧を期待してはいけません。まずは7割できたことを認める。そして先の「イエス、バット構造」を使って、1点だけアドバイスしましょう。

 

 

柳沢 幸雄

東京大学 名誉教授

 

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