新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

不動産は金融資本主義に翻弄され続ける

現代金融資本主義は、2008年にリーマン・ショックに端を発した未曽有の金融危機の発生によって一度は潰えたかのように見えましたが、10年が経過した現在、素知らぬふりをして、ふたたびその鎌首をもたげています。


 
リーマン当時、「ジャンクボンド」と呼ばれた信用度の低い債券は「ハイイールド債」と名前を変えただけでまた市場で持て囃されています。2017年12月、日本でも大きな話題となったビットコインに代表される仮想通貨の価値の激しい上下動は、まさにこの金融資本主義に代表される拝金主義の極みともいえるものでしょう。

 

人々の欲望はいつの時代も潰えることなく、そしてそこから学ぶこともないのです。

 

時代は製造業に代表されるハードウェアの時代から、ソフトウェアの時代に移行しました。おじさんたちの憧れだった「僕らのソニー」は、いつのまにか「ソニー生命」「ソニー損保」「ソニー銀行」が収益の半分以上を稼ぎ出す金融業に変身することで復活を果たしています。


 
GAFAと呼ばれるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの各社は、いずれもこのソフトウェアの時代を代表する銘柄として急成長を果たしています。しかし、GAFAの現在の成長スピードを支えているのは、彼らの類い稀なるソフトウェア開発能力ではなく、金融資本主義によって仕掛けられた、関連企業に対する数多くのM&Aによっての成長であることも時代の象徴といえましょう。


 
長きにわたって超ドメスティック産業であった不動産にも、この金融資本主義は容赦なく襲い掛かっています。おそらくこれからの社会においても不動産はこの金融という怪物に翻弄され続けていくことでしょう。ということは、これからの社会でも不動産バブルは何度も生成され破裂する、を繰り返していくことと思われます。


 
ただし私たちが心しなければならないのは、マネーゲームと実際の不動産の効用には常に大きな乖離があるということです。実際に自分たちの生活に寄り添う不動産は、いつの時代も不変であり、私たちにその効用を提供してくれる、身近でありがたい存在なのです。


 
一度「欲の皮を引っ込めて」不動産を眺めてみれば、そこにはきっとあなたにとってまた違った不動産の新しい世界が見えてくるに違いありません。また、そんな世の中が早く訪れることを期待してやまないのです。

 

牧野 知弘
オラガ総研 代表取締役

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