そんなとき、便利な魔法の言葉は「まきもどし!」です。
たとえば、バスの時間に遅れて、パニックになってしまった、というとき。
「まきもどし!時間を巻き戻そう!」と、家までの道をもう一度戻り、次のバスにちょうど良い時間にバス停に着くように、再度家の前から出発します。大人にとってはなかなか面倒ですが「それで落ち着いてくれるなら…」と考えてみるのも一案ではないでしょうか?
そして、そんな風に「まきもどし」を繰り返しているうちに、”失敗してもやり直せる”ことをわかりやすく経験し、理解できるようになります。
お菓子など、他のものでごまかしてもいいのですが、失敗を克服した経験になりにくく、不満足が残ります。
子どもを育てるのは、時間と手間がかかります。「いつもそうしないと…」とがんばりすぎる必要はありませんが、「そんな考え方もあるんだな。」と感じていただけたらと思います。
やってほしいことを伝えても上手くいかないときは…
「ワーキングメモリー」と呼ばれていますが、人は何かに取り組みながら同時に、短い時間、保持する記憶を使っています。
たとえば、買い物かごを持ってスーパーをまわりながら、献立を考え、必要な材料を想起し、その記憶を保持したまま野菜やお肉をかごに入れ、「醤油はあっちの棚だから…」と記憶を引き出して移動する…と常に記憶を更新しながら、つまり使った記憶は捨て、次に必要な記憶を短い時間保持することを、繰り返しながら行動しているのです。
この「ワーキングメモリー」を幼児はみんな、大人ほど上手に使えていません。だから、日常でやってほしいことを子どもに伝えても、行動につながらないことがあるのです。
幼稚園の子どもに、複雑な手順のお手伝いを頼むことは難しいですよね。
発達障害の子どもは、このワーキングメモリーの使用がとくに苦手なことがあります。「手を洗ってからお弁当だよ」といわれたのに手を洗っていなかったり、「はさみとのりを持ってきてね」といわれたのに、何も持たずに座っていたり、そんなこともありますね。
どのくらいの指示であれば理解できるのか、1つずつなのか、2つ同時でも良いのか、2つ同時なら伝え方をどのように工夫するか、大人が配慮することで、子どもの「できない感」を軽減することにつなげられるのではないでしょうか。
株式会社コペル 有元 真紀