インドは中国に次いで世界第2位の14億人の人口を誇る。豊富な人口に加え、平均年齢が27歳と中国より10歳若く、中国経済が減速する中、インドの本格的な成長が期待されている。今後、インドは世界市場の「最後の成長のエンジン」となれるのか。日本企業は成長の果実を得ることができるのか。本連載はグルチャラン・ダス著『日本人とインド人』(プレジデント社)の抜粋原稿です。

規制撤廃後、民間企業として成長したスズキ

さて、インドには規制はなくなりつつあるとはいえ、進出企業に大きく市場が開かれているとはまだいえません。スズキが成功したのは当初、国営のマルチと合弁で会社を設立したからです。

 

スズキのインドでの歩みは次のようになります。

 

マルチ・スズキ・インディアは現在の名称です。インドでは乗用車を造り、販売しています。

 

1982年という早い段階に、インド政府との合弁会社「マルチ・ウドヨグ」として設立されました。1992年、スズキは出資比率を26パーセントから50パーセントへ。2000年代から生産、販売台数が増えていき、インドで造った「アルト」をヨーロッパへ輸出し始めた。

 

2002年、スズキは出資比率を過半数の54パーセントに引き上げてマルチ・ウドヨグを子会社にして、2006年にはインド政府が全保有株式を売却、完全民営化されました。

 

スズキの成功の大きな鍵は、経済改革前の時代は政府と一緒に公的な組織としてスタートし、保護主義が薄れ、規制が撤廃された後は民間企業として成長したところです。最初から民間企業ではインドのマーケットに入ってこられなかったし、経済改革以後も公的な組織を続けていたら、生産性は落ちたでしょう。

 

私はスズキに依頼されて講演をしたこともあります。その時、スズキの担当者が強調して言っていたのが、「スズキはローカライズをちゃんとやっている」ということ。それも鈴木修会長が直接、指示したとのこと。

 

日本企業に限らず、海外企業はインドに来ると、インド人従業員を見下したり、なかには傲慢な態度を取ったりする人がいます。しかし、スズキの日本人は一切、そういうことはしなかった。韓国企業には、インドだけでなく、東南アジアへ行っても、傲慢な態度で応対する人が多い。あれは国民性でしょう。自分や自分の組織を大きく見せたがるところがあります。韓国も近代化された国ですけれど、日本よりもまだ個人主義が発展していない。そこから来るのでしょうが、組織に寄りかかる人が多い。

 

話はそれましたが、もうひとつスズキのよい点は、インド人が買える価格で車を造っていること。ホンダもインドでは多く走っていますが、なんといっても車両価格が高い。ですから、ホンダのマーケットシェアはタタ、マヒンドラ・アンド・マヒンドラ、ヒュンダイに後れを取ってしまうのではないでしょうか。

 

グルチャラン・ダス
著述家 経営コンサルタント

日本人とインド人

日本人とインド人

グルチャラン・ダス

プレジデント社

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