子育て中のコンサル会社社長、地方移住&テレワークしてみた

コロナ禍の影響により、多くの企業がテレワークを導入しましたが、今後もその流れは定着するものと予想されます。それにより、人々の「移住ニーズ」もいよいよ本格的に高まってきました。この流れが郊外・地方の不動産市場にどのようなムーブメントをもたらすのか、また、ユーザーとして物件の見極めに必要なポイントはなにか、プロが解説します。

リモート勤務の常態化で生じた、本格的な移住ニーズ

新型コロナウイルスの蔓延のため、この6月~7月にかけて「原則リモート勤務化」を宣言・導入する企業が激増しました。また今後についても、多くの企業はリモートワークを取り入れた勤務形態を継続するとしており、「原則全員出社」の習慣は消失していくものと推察されます。

 

それに伴い、働く人たちの住環境へのニーズは、従来の「勤務の利便性重視」から、「ワークライフバランス重視」へと変化の兆しを見せています。

 

また、30~40代の若い世代を中心に、地方やリゾート地への移住ニーズも急速に高まっています。米国の『ウォールストリートジャーナル』誌は、ベイエリアから田舎へ移住する人が大きなトレンドになっているとの記事を掲載していましたが、日本でもまた、同様の現象が起こりつつあります。その流れは今後も加速・浸透することが予想されます。

 

過渡期となる現在は、本格的な移住ではなく、テレワークの発展形として、リゾート地や観光地などでテレワークをしながら休暇をとる「ワーケーション」も提唱されています。

 

リモートワークやワーケーションの普及・定着により、地方やリゾート地への移住を希望する人々が増えつつありますが、それにより、日本の不動産市場、なかでも郊外や地方、リゾート地の物件の評価は、従来とは違ったものに変化しているのです。

若年化する移住希望者…「求める環境」とは?

かつて、地方都市やリゾート地の移住といえば、50~60代のアーリーリタイア層、リタイア層の第一選択肢でした。「ガーデニングを楽しみたい」「静かな環境で暮らしたい」などが主なニーズでしたが、近年の20〜40代が持っている移住ニーズは、従来とは異なっています。

 

★都心部の会社への出勤が前提となる

 

関東近郊にも多くの別荘地があります。都心部からの距離は東京近郊のベッドタウンとあまり変わりませんが、移動時間や移動の楽さは大きく違います。テレワークとはいえ、週に数回、もしくは不定期に出社する場合があるため、通勤の利便性を考慮せずに2拠点生活をはじめると、移動だけで疲れてしまい、負担が増してしまいます。

 

軽井沢と葉山とでは、車なら約1時間の違いがありますが、電車や新幹線といった交通手段で比較すると、約20分程度の違いしかありません。また、座席に座れるかどうかによっても快適性は違ってきます。

 

下記の図表を参照ください。ご自身が移住を考える場合も、投資物件の購入を検討する場合も、移動手段や通勤距離や時間について、しっかりと比較検討する必要があります。

 

 

 

★子育て世代であるため、教育環境を重視

 

子育て世代である30〜40代が気になるのは、移住先の教育環境です。学校が近いかどうかといったレベルではなく、多くの家庭が、治安、進学率、校風など様々な点を吟味して判断しています。

 

学校や塾などは、都心部のほうが魅力的でレベルが高いところが多いですが、地方にもユニークな教育方針や取り組みで注目を集めているところはあります。とはいえ、学校が公開している情報と実態に乖離はないのか、情報をどうやって集めたらいいのかなど、学校選びは移住決断に際しての懸念材料です。

 

学校の環境は子どもの人生に大きく影響しますから、地方移住希望者にとって、教育環境の充実度は必ず検討事項に上がるといえます。

 

★病院、スーパーまでの距離と生活のしやすさ

 

子育て世代なら、教育環境はもちろん、そのほかの生活環境の充実も求められます。たとえば買い物も、シニア世代であれば、週1回のまとめ買い程度でも当分の食事は賄えますが、成長期の子どもがいればそうもいきません。

 

人気リゾート地の箱根も、場所によっては近隣にスーパーやホームセンターがなく、買い物のために小田原まで出る必要があるなど、不便なところもあります。

 

20~30代にとっては、自然環境と生活環境の優先度が同程度であるといった点が、移住先を絞りにくくする原因のひとつとなっています。

 

★ワークライフバランス

 

テレワーク勤務の場合、従来型の労働形態と評価ポイントが異なる会社も多いようです。企業にとっても、テレワークによる従業員の管理や評価は手探りにあるといえますが、働き手にとっても、就労を正しく評価してもらう点では同様です。

 

そのため、評価が気になって過剰に働いたり、メンタル面に不安を抱える従業員も出てしまうといった問題も少なくありません。

 

キャリアをスタートして間もない20代や、ステップアップの転職を視野に入れている30代にとっては、自身の今後の働き方をどうするかは非常に重要です。

 

その点から見ると、移住という決断が今後のキャリアにどう影響するのか、慎重に考える層は、若手になるほど多いといえます。

地方物件を扱う社長として、別荘地に移住してみた!

ここから、弊社の代表であり、30代子育て世代でもある筆者が、実際に軽井沢に移住した実経験をもとに、生活の実際や課題等について紹介したいと思います。仕事の拠点はこれまで通り東京都心部。テレワークをしながらの軽井沢移住に無理がないかなど、体験者にしかわからないポイントについて率直に話します。聞き手となってくれたのは、弊社スタッフで、同じく子育て世代のM氏。

 

――30代で東京から軽井沢に移住してみて、子育てや人間関係などに感じる難しさはありますか?

 

【浅見】 いまは子どもが保育園に行っているため、先生方との繫がりはあるものの、現地のコミュニティに入りきれているかというと、そうではないというのが現状です。

 

ただ軽井沢は、移住者や二拠点生活を送る人々が多いので、疎外感を感じることはありません。人付き合いの煩わしさを感じたこともなく、それはこの場所のいいところかなと思っています。

 

――移住者を受け入れる土地であるかどうかも、別荘地選びの際には押さえておきたいポイントですね。仕事をするうえで、軽井沢という別荘地のよさや、物足りなさを、それぞれ教えて下さい。

 

【浅見】 移住して最初の数ヵ月は、正直、東京の生活を恋しく感じました。東京で生活している人は、家も友人も、子どもが通い慣れた学校も、仕事も、すぐそこにあるわけです。また、Uber EatsやAmazonフレッシュが使えますし、マンションの近辺に便利なコンビニや美味しいレストランが並んでいます。東京の住環境はとても魅力的なんです。

 

当然、それらをすべてゼロにして移住し、新しく生活環境を作り上げていくのは困難です。とくに大変だったのは、子どもの保育園の入園手続きでした。しかし、最初の数ヵ月で環境に慣れてくると、「ここでの生活は、こういうものだ」という感覚になり、東京に戻りたいという気持ちはなくなってきました。

 

生活しやすさと自然に囲まれた環境の良さが両立しているのは、軽井沢という地域の強みだと思います。

 

――移住の決断には勇気が必要だったと思うのですが、どのようにして決めましたか?

 

【浅見】 昔から、自然豊かな場所へのあこがれがあり、暮らしてみたいと思っていたんです。ですが、別荘購入となると資金的にも難しくて。弊社の働き方がフルリモートになり、これなら移住できるかも…と考え、思い切って軽井沢に生活拠点を移しました。

 

軽井沢はもともと好きな場所ですし、数年前から訪れていたので、比較的早く順応できましたが、初めて別荘地や地方に移住する場合は、1ヵ月ぐらいお試し移住することをお勧めします。それなりに実態がつかめると思うので。

 

子どもの学校の都合などでなかなか移住できない方は、長期休みを利用したり、夫婦のどちらかだけが移住してみるなど、工夫は必要ですね。

お試し移住の受け皿としての一棟貸し切り宿泊施設

別荘地に移住してみたい、ワーケーションしてみたいというニーズは確実に増えてきましたが、実際に踏み切れる人はまだこれからといった状況です。単純に情報が少ないということもありますが、いちばんの課題は「現地の生活実態が掴み切れない」という点でしょう。

 

しかし貸別荘を数ヵ月借りると、何百万円もかかってしまう場合もあり、あまり現実的ではありません。お試し移住の際は、比較的安価に借りられる一棟貸しの宿泊施設を活用する方法もあるでしょう。

 

「リモートワーク」「ワーケーション」「デュアルライフ」「移住」…このような新しい文脈が注目されていることからもわかるように、いま、私たちの生活は新しいステージへと向かっています。自分らしい暮らしや仕事の仕方を実現していける人々が増えることを期待しています。

 

 

 

浅見清夏

ハウスバード株式会社 代表取締役

 

ハウスバード株式会社 代表取締役社長

青山学院大学卒業後、アクセンチュア(株)戦略コンサルティング本部勤務。その後、大学在学中の上海・復旦大学への留学経験を活かし、中国・上海にて幼児教育事業、レインボーバード幼児教室を起業、のちにヤマトキャピタルパートナーズに売却。帰国後、政府系VC・産業革新機構に投資サイドとして勤務。

2017年より現職。「1日単位で誰にでも貸し出せる家づくり」をコンセプトに、不動産・マーケティング・デザイン・建築・施工・運営管理など幅広い知識と経験を持つスタッフを集積し、日本各地で魅力あふれる物件のプロデュースを展開。クライアントに一気通貫でサービスを提供できるオンリーワンの会社となるべく、日々邁進中。

著者紹介

連載木造住宅をレトロモダンな「一棟貸切旅館」に…古民家再生投資のノウハウ

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