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「幼少期の本の読み聞かせ」が重要なワケ
子どもが目を輝かせる瞬間を逃さないようにしていれば、子どもが好きなものを見つけることはそんなに難しいことではありません。問題は、それをどう伸ばしていくかです。
その方法として有効なのが本や図鑑です。
たとえば、子どもが蝶に興味を持ったとして、日本の野山を駆け回って子どもに捕まえられる蝶の種類には限りがあります。しかし、図鑑を開けば、世界中の蝶が解説とともにずらっと並んでいます。一気に大量の情報をインプットすることができ、知識のすそ野を広げることができるのです。新しい物事を知ることは、知識をぐんぐん吸収できる時期の脳にとってよい刺激になります。
書店や図書館に子どもを連れて行き、読みたいと思う本を自分で好きなだけ選ばせましょう。その中に、子どもが興味を持ちそうなものを1冊加えてあげるとさらに効果的です。
昆虫が好きな子どもは、自由に選ばせると、昆虫の本ばかり探して選ぶことでしょう。そこで親が、昆虫博士であるファーブルの伝記を1冊選ぶという具合に、興味がある分野に関連しているけれども、子どもには思いもよらないような1冊を選んであげると、子どもの世界は一段と広がります。世の中に学ぶべきことはたくさんあります。ファーブルの伝記から歴史への興味が生まれるかもしれません。
ただ、親が選んだ本を読むことを強制してはいけません。子どもが興味をひかれて読めばベストですが、読まなければまた別なものを選んでみればよいのです。
私は幼児期には1日に10冊、本を読み聞かせることをおすすめしています。0歳からスタートして小学校に入る前くらいまで続けていけば、自然と本が好きな子に育ちます。大きくなってから「本を読みなさい」などと言っても、本を読むための素地ができていないのに、自らすすんで読めるはずがありません。
本や図鑑を選ぶポイントとしては、子どもの年齢を基準にしないということです。年齢は目安程度に考え、子どもの目の輝きを基準にして選びましょう。興味がある分野であれば、子どもは難解に思えるような専門書であっても、なんとかして読もうとします。読書の習慣が身についていれば、類推して読むことができるようになってくるからです。そうしているうちに、難しい漢字や学術用語なども覚えてしまいます。
目の輝く瞬間を多くつくることが幼児教育のポイントですが、そのために読書ほど効率のよいものはありません。本を読むことで「はっ!」と目を開かされるような体験を多く積み重ねられるよう、サポートしてあげたいものです。
テレビ、ゲームへの「のめり込み」には要注意!
子どもの能力を伸ばすのとは逆に、子どもの可能性を奪うものがあります。それはテレビやビデオの長時間視聴やゲームです。とくに、発達障害の子はゲームを一度やり始めると、定型的な発達をしている子どもよりも、のめり込みやすい傾向があるので、注意が必要です。
テレビやビデオを長時間観ることによって、言葉の発達に遅れが出たり、他者とのコミュニケーションに問題が生じたりするという報告はこれまでに多くされています。
米国小児科学会は「2歳以下の子どもにはテレビを見せないように」という内容の勧告を1999年と2001年に出しています。これを受けて、日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会も次のような提言を2004年に出しました。
2.テレビはつけっぱなしにせず、見たら消しましょう。
3.乳幼児にテレビ・ビデオを一人で見せないようにしましょう。
4.授乳中や食事中はテレビをつけないようにしましょう。
5.乳幼児にもテレビの適切な使い方を身につけさせましょう。 見終わったら消すこと。ビデオは続けて反復視聴しないこと。
6.子ども部屋にはテレビ・ビデオを置かないようにしましょう。
アメリカの州によっては、テレビなどのディスプレイのある保育園は認可されないほど、ディスプレイの存在が警戒されています。
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人間はテレビ画面などのディスプレイから情報を読み取ることはできますが、あくまでバーチャルのものとして脳が処理しています。目は画面を見ていたとしても、モノとしては見ていません。ディスプレイで文章を読んでいると、目で追ってはいたけれど、まったく意味が頭に入ってこなかったという経験のある方もいるでしょう。
本物と映像に対する、赤ちゃんの反応の違いを示す実験があります。
すでに歩ける条件が揃っているけれど、まだ歩きださない赤ちゃんに、同じ月齢で歩いている赤ちゃんの等身大のライブ映像を見せたときと、実物の赤ちゃんを見せたときの反応の違いを観察した実験です。等身大のライブ映像を見ても、赤ちゃんはとくに反応しませんでした。ところが、実物の赤ちゃんが歩く様子を見せたところ、真似をして歩きだしたというのです。
また、リアルとバーチャルの授業の学習効果の違いを示す実験もあります。
被験者をAとBの二つに分け、中国語の授業を受けてもらいます。Aグループは、直接先生から授業を受けます。Bグループは、隣の部屋でAグループと同じレッスンを同じ時間に、ライブ映像で受けます。
すると、その学習効果には、はっきりと差が見られました。ライブ映像で学んだBグループより、先生から直接学んだAグループの方が、よい成績をおさめたのです。
これらの実験から、ディスプレイの映像の精細度がどれほど本物に近づいたとしても、脳の受け取り方は本物と映像とでは違うのだということがわかります。
また、ゲームに関しては、WHOによりゲーム依存症が「ゲーム障害」として国際的に疾患として認められました。2018年6月に公表された改訂版国際疾病分類「ICD-11」の最終案に明記され、2019年5月のWHO総会で正式決定される見込みです。
ゲームをしているとき、人間は刺激に対して反射的に反応するような、は虫類の脳を使っています。そうすると、レーシングサーキットのように同じところをぐるぐると周回するような脳の回路になってしまいます。そして、次第に人の気持ちを想像することなどができなくなってしまいます。
さらに、ゲームは時間もお金も費やさずにはいられないように設計されています。もともと依存するようにつくられているので、一度ゲームをやりはじめた子どもにやめなさいと言っても、なかなか言うことを聞きません。そのため、子どもにはできるだけ触れさせないようにするのが得策です。
時間を決めてやりましょう、などとアドバイスがされることがありますが、時間を決めてやめられるなら、依存症は存在しません。ゲームは自力ではやめられないのだということを前提として、できるだけ与えないようにすることです。
とはいえ、完全にシャットアウトするのは難しいものです。依存症にならないための方策としては、「毎日やらせない」という手があります。
ゲームをしてから3日分の時間をおけば、依存症にならないとされています。1日やったら、次は4日後まで絶対に触らせないというルールを徹底すれば、依存症に陥ることを防ぐことができます。
せっかくの子どもの才能を潰さないためにも、発達に悪影響を与える可能性のあるゲームはできる限り遠ざけ、幼児のテレビの視聴は、お母さんが食事の支度をする数十分の間などにとどめるようにするのがよいでしょう。
大坪 信之
株式会社コペル 代表取締役