一般企業では既に始まっている時間外労働の上限規制が、2024年4月から医師にも適用される。勤務医の時間外労働時間を「原則、年間960時間までとする」とされているが、その実現は困難ではないかと指摘されている。その「医師の働き方改革」を実現した医師がいる。「現場のニーズに応え、仕事の流れを変えれば医師でも定時に帰宅できる」という。わずか2年半で、どのように医師の5時帰宅を可能にしたのか――、その舞台裏を明らかにする。

「医師の働き方改革」 2年半で5時に帰宅を実現!

コーチングを用いながら、糖尿病内科において医局員の労働環境改善に取り組み始めたのは、まだ「医師の働き方改革」という言葉もなかった2012年でした。

 

その2年後くらいには、残業がゼロになっていきました。そうした意味では、2024年度から厚生労働省が旗振り役となり医師の時間外労働条件規制いわゆる「医師の働き方改革」を施行する、ちょうど10年ほど前に、医局員全員の協力を得つつ、「医師の働き方改革」を実現させていったことになります。

 

そして、ここで築き上げた「医師の働き方改革」は私の退職後も継続されており、厚生労働省が管轄している「いきいき働く医療機関サポートweb(いきサポ)」のなかで医療機関の勤務環境改善の「取組事例」としても紹介していただいております。

https://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp/casestudy/issue-detail?issue-id=208

 

「働き方改革」の手法はたくさんあり、私のやり方が“絶対”というわけではもちろんありません。ただ、多くの方が「実現は難しい」と考えるような地方の医療機関においても「医師の働き方改革」は実現し得るのだと、みなさんに思っていただければ幸いです。

 

多くの医療スタッフと一緒になって力を合わせていけば、「みんなが赴任したがる」「みんなが定時で帰れる」「なおかつ収益も高まる」診療科や医療機関へと変貌することができる。そして、その好循環は継続していくことにもなる!

現在、多くの医療機関が新型コロナウイルス感染症の影響下において、大変な思いをされていると思いますが、それでも、「医師の働き方改革」を実行していけば、これからも、日本が誇る「患者が安心して利用できる医療システム」を保持していくことは可能であると思います。

成功のカギは「他人の評価」を得ること

ご存じの通り、新型コロナウイルス感染症の影響は我々の想像を遥かに上回る状態で多くの医療機関を苦しめ続けています。

 

患者さんの「受診控え」による大幅な売上ダウン等をきっかけに、「地域の方々から自院がどの様に評価されているのか」本当のところを知り、自分たちの病院の存在価値を改めて考え直すことになった医療関係者も少なくないはずです。

 

“病を抱え大変な思いをしている患者のために存在する”医療機関の多くは、これまで、患者さんの評価をあまり気にすることなく運営することができたかもしれません。

 

しかし、新型コロナウイルス感染症によって医療機関が置かれている環境が大きく変わっている昨今、医療機関で提供する医療について「評価をするのは常に『他人』である」ことを、強く意識する必要がありそうです。

 

自分自身としては一生懸命に病院経営を行っているつもりなのに、「なかなか患者さんが集まらない」「職員の求心力をまとめられない」といった、自らの思いと他者からの評価とのギャップを埋めていくためには、患者さんからのアンケート調査などを含め、できるだけ多方面から定期的にフィードバックをもらうようにする。このことがこれからの時代、病院経営を行っていく上で重要な鍵となってきています。

 

そして自分たちの病院や自らのマネージメント力を客観的に見つめ直す習慣を常日頃から定着させることが非常に大切です。

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