日中に襲われる強烈な眠気、会議中あるいは作業中に意識が飛ぶような感覚。多くの人が日常で感じているこれらの症状のなかに、単なる眠気や疲れとして見過ごせない、深刻な問題が潜んでいるケースがあるのです。スタンフォード大学医学部教授が、睡眠トラブルの問題について警告します。※本記事は、スタンフォード大学医学部教授・西野精治氏の著書『スタンフォード大学教授が教える 熟睡の習慣』(PHP研究所)より抜粋・再編集したものです。

ムダな会議、懇親会…日本に多数生息する「時間泥棒」

会議の時間の問題は、その人、その組織の「時間意識のありよう」と直結しています。

 

日本も最近はだいぶ変わってきたようですが、それでもまだ、ビジネスにおいて時間の拘束、「そこにいることに意味がある」という感覚が強くあるように思えます。発言をしなくても、組織の一員としてその会議に出なければならないような、立場で拘束されている時間がけっこうあるのではないでしょうか。

 

その点、アメリカは能力主義で、達成度を評価する社会ということもあって、個々の時間に対する価値観には鷹揚(おうよう)です。成果主義ですので、勤務時間の開始・終了や、長さにはこだわらず、成果を上げれば評価されます。逆に、どれだけ長時間頑張っても、成果が上がらなければ無能だと見なされます。職場のつきあいやパーティに関しても、自由な時間に集まり、自由に情報交換を行うのが普通です。会の終わりまで必ずいなければいけないということはまずなく、それぞれ自由な時間に帰ります。

 

時間感覚がフレキシブルなのは、個々が自分の時間を大切にしたいと考えているのと同時に、他人の時間も尊重するためです。私も最初は違和感がありましたが、合理的な生活習慣とはこういうことだと、いまではすっかり身についてしまいました。

 

日本は治安もよくて、安全な国。ものが置かれていても盗られることもないし、お金も盗られない。たいへんいい国です。しかしながら、日本人はわりと平気で「他人(ひと)の時間は盗る」──。そんなふうに感じることがあります。

 

たとえば、長時間にわたって拘束される会議もそうです。「ご挨拶に伺います」といった表敬訪問というのもあります。せっかくお会いしたのですから、その場ですぐ本題に入ればいいと思うのですが、「いえ、今日はご挨拶だけ」と言って帰られるようなことも、けっこうあります。あるいは「懇親」「親睦」という飲み会など。「私はそういうのには出ません」と言いにくい雰囲気があります。

 

些細なことかもしれませんが、そういったことが、その人の貴重な時間を奪っているかもしれない、という意識がやや薄いような気がします。ほかの人の時間をむやみに奪わないということは、個人の時間を大事にするということです。盗られてばかりの人はたまったものではありません。そういう意識をもつことも、時間意識を変えていくために大事なことだと思います。

 

日本では、会議の終了時間が未定であることは目珍しくない。(※写真はイメージです/PIXTA)
日本では、会議の終了時間が未定であることは目珍しくない。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

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スタンフォード大学教授が教える 熟睡の習慣

スタンフォード大学教授が教える 熟睡の習慣

西野 精治

PHP研究所

睡眠とは単なる休息ではなく、あらゆる生命現象の基盤である―。世界最高峰といわれるスタンフォード大学睡眠生体リズム研究所所長が、「脳の老廃物を洗い流す『グリンパティック・システム』」などの睡眠研究の最前線から、「…

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