新型コロナウイルス感染拡大で、深刻な打撃を受けたと報道されたスペイン。ところが非常警戒宣言下で、不動産利回りは上昇したといいます。不動産マーケットの現状と見通しについて、現地の弁護士がレポートします。

非常警戒宣言解除後のスペイン不動産市場

ロックダウン中、ロックダウン後のスペイン住宅市場の価格を分析すると、スペインの住宅販売市場は、2009年の住宅バブル崩壊に比べて、コロナ禍による影響はそれほど大きく受けませんでした。

 

スペインの非常警戒宣言は2020年6月21日に一旦解除され、その後地方自治体毎での自粛宣言が発令されています。今年の第2四半期は、新型コロナウィルス非常警戒宣言によりスペインの国内経済活動が麻痺し、外出制限が約100日間も続きました。現在は自主的な自粛ということもあり、建設工事、不動産内覧、売買の再開も問題なくされています。

 

最新の不動産価格指数によると、2020年7月におけるスペインの中古住宅の平均価格は前月の6月に比べ1.6%上昇し、1m2辺り1,677€でした。しかし2020年第1四半期、ロックダウンが始まる前と比較すると、スペイン不動産平均価格は4.3%下落し、前年度の2019年7月と比べると平均3.5%下落しています。マドリッドやバルセロナなどの大都市でも、それぞれ前年の2019年の同じ時期に比べ、マドリッドは3.5%下落、バルセロナは3.1%下落となりました。

 

このような時期にもかかわらず、バスク自治州のサンセバスチャン市の不動産平方単価は、史上最高額の4,818€/m2になりました。次に高いバルセロナ市は4,084€/m2、マドリッド市は3,687€/m2でした。

スペイン…各大都市の不動産価格変動

■バルセロナ

バルセロナでの住宅販売価格は非常警戒宣言前の2020年第1四半期と非常警戒宣言後の第2四半期の価格比較で、地区ごとには以下の通りになっています。

 

出所:Takumi Spain(http://www.takumispain.com/)
[図表2]バルセロナの住宅販売価格 出所:Takumi Spain(http://www.takumispain.com/)

 

バルセロナの平均では、意外にも2020年ロックダウン後の価格はロックダウン前と比べ1.3%に上昇しています。特にLes Corts(ラス・コルツ)地区で2.2%の上昇が見られました。反対に、バルセロナ市の中で一番住宅不動産価格が安いNou Barris(ノウ・バリス)地区はロックダウン後には下落幅が高くなっています。

 

 

住宅購入に人気の地区はSant Andreu(サン・アンドレウ)12.5%上昇、Sant Marti(サン・マルティ)10.5%上昇、Horta Guinardo(オルタ・ギナルド)9.3%上昇でロックダウン前より人気が高まり、外国人が多く物件を所有する旧市街とラス・コルツ地区では人気がなくなりました。

 

ある不動産販売サイトのロックダウン期間の投稿物件数は、内覧が出来なかった事や不動産会社のオフィスへの訪問も不可能であった為、平均27%も少なくなりました。

 

Nou Barris(ノウ・バリス)地区は安い価格での投資が可能で、下落幅も高いことから投資地区として良い機会かもしれません。

 

そしてロックダウン後の7月、バルセロナでの平均住宅価格は1.9%下落しました。特に市内で2番目に住宅価格が高いラス・コルツ地区は3.7%と最も下落率が高く、4,970ユーロ/m2になりました。またバルセロナで最も住宅価格が高い、サリア・サン・ジェルバシ地区の5,230ユーロ/m2は、ロックダウン後、1.7%下落。サンツ・モンジュイック地区では3%以上の下落が見られました。

 

■マドリッド

マドリッドにおける中古住宅の平均価格は全体的に0.4%下落しました。マドリッドには21地区ありますが、21地区のうちCarabanchel(カラバンチェル)地区は2.4%下落、Villaverde(ビラベルデ)地区は1.7%下落、Hortaleza(オルタレザ)地区は1.3%下落しました。

 

しかし、Chamartín(チャマルティン)地区の2.4%をはじめ、7地区で逆に価格の上昇が記録されています。

 

マドリッドの中古住宅の件数は、ロックダウン期間の3か月間で平均27.5%減少しましたが、住宅購入に対する関心は2020年4月から6月にかけて9.2%増加しています。

 

2020年7月のマドリッドでの住宅価格は平均単価3,687ユーロ/m2に留まりました。これはスペインの不動産バブル崩壊後一番高かった、1年前の2019年7月の平均3,822ユーロ/m2、より3.5%下落しています。

 

マドリッドで平均単価価格が高いのはSalamanca(サラマンカ)地区の5,903ユーロ/m2で、昨年の同じ時期から1.4%下落しています。

 

■バレンシア

ロックダウン中のバレンシア市の住宅価格は、あまりロックダウンによる影響は受けませんでした。中古住宅販売平均価格は非常警戒宣言解除後にロックダウン期間よりも2.6%増加しました。

 

バレンシアの16地区のうち、4月から6月の間に価格を下げたのは5地区のみでした。Benimaclet(ベニクラメット)3.3%の下落、Jesús(ヘスス)Rascanya(ラスカニャ)1.8%の下落、Patraix(パトライシュ)1%とEl Pla del Real(エル・プラ・デル・レア)0.9%です。

 

残りの地区はロックダウン中に住宅価格上昇し、La Saïdia(ラ・サイディア)4.9%、Benicalap(ベニカラップ)4.6%、Camins al Grau(カミンス・アル・グラウ)4%のように約5%の上昇が見られました。

 

この時期の住宅販売広告数も、マドリッドやバルセロナと比べて平均17%減で減少幅が少なかったのが特徴です。

 

7月は、バレンシアでも住宅販売の平均価格が1.9%下落し、1,807ユーロ/m2となりました。しかしロックダウン後も上昇している地区もあります。Algirós(アルヒロス)0.2%の下落、Campanar(カンパーナル)0.3%の下落で2,086ユーロ/m2。Poblats Marítims(ポブラッツ・マリティムス)地区0.5%の下落で1,800ユーロ/m2の価格になりました。

 

バレンシアの最も住宅価格が高い地区は、2020年7月に1ヶ月前に比べて1%の下落のCiutat Vella(シウタット・ヴェリャ)2,897ユーロ/m2、次に同じく1%下落のL'Eixample(ライシャンプラ)2,890ユーロ/m2です。

 

まとめ

2020年第2四半期のスペインにおける住宅物件の利回りは非常警戒宣言期間中にも関わらず、非常警戒宣言前と比べ、8.2%上昇し、商業用物件、オフィス物件も上昇と興味深い結果になりました。

 

スペインでロックダウン中の利回りが高くなった理由は、不動産販売価格が下落しているにも関わらず、賃貸価格がそれほど下がっていないためです。その結果、専門家は高い利回りが出ていると見ています。

 

また、オフィス物件がスペインの不動産投資物件の中で最も高い利回りとなり、テレワークが増える中で、今後どうなっていくか注目されます。

 

今年はコロナ禍で、物件の値段が少し下がっているので、不動産投資をスタートされたい投資家たちには魅力的な年になっています。

 

 

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