「銀行が破綻する」と何が起きるのか?最悪のシナリオを検証

これまで複数回にわたり、金融危機のシナリオについて解説してきました。深刻化する今次局面の不況を乗り切るため、銀行は企業への貸し渋りを控えなければなりませんが、銀行が資金不足になっては元も子もありません。そこで日銀による融資が求められるわけですが、実はそこに「銀行経営者の気持ちひとつ」で引き起こされかねない、ある問題もはらんでいます。経済コラムで多くのファンを持つ経済評論家の塚崎公義氏が、明快に読み解いていきます。

長引くゼロ成長、ゼロ金利、そして「コロナ禍」

金融危機というと、平成バブルが崩壊したあとの90年代後半の危機が印象的です。大手銀行が倒産し、銀行相互の資金の貸し借りが止まり、各銀行が自行の資金繰りを懸念して貸出に慎重になりました。その10年後、米国で「リーマン・ショック」が発生し、日本のバブル崩壊後とおおむね同様の金融危機が発生しました。

 

現在の状況としては、銀行がバブル的な貸出を行って不良債権に苦しんでいるわけではありませんが、長引くゼロ成長とゼロ金利で苦しんでいるところへコロナ不況が襲ってきたわけですから、不況の深刻度合いによっては破綻する銀行が出てくる可能性も否定できません(ゼロ成長、ゼロ金利、コロナ不況の三重苦に関しては拙稿『銀行業界の断末魔「ゼロ成長・ゼロ金利・コロナ不況」の行く末』をご参照いただければ幸いです)。

 

あるいは、欧米のほうがはるかにコロナウイルスが深刻なようですから、欧米で大手銀行の破綻が発生するかもしれません。そこで、リスクシナリオとして、銀行が破綻すると何が起きるのかを、考えてみましょう。

「倒産した銀行の借り手に倒産が多発」というカオス

銀行が倒産すると、借り手は返済を迫られます。そうなると、必要資金を他行から借りる必要が出てきますが、それは容易なことではありません。他行にとっては「新規取引先」であり、借入申込に対して申込者の返済能力を慎重に調べる必要があるからです。とくに地域金融機関が倒産すると、同じ地域の別の金融機関に多数の借入申込が殺到するので、順番待ちの間に倒産する借り手も出てくるでしょう。

 

さらに問題なのは、軽微な問題を抱えた借り手です。たとえばコロナ不況で一時的に赤字に転落している借り手について、取引銀行は返済を待ってくれるかもしれません。

 

しかし、取引銀行が倒産すると、そうした借り手も返済を迫られるでしょう。ほかの銀行に借入を申し込んでも新規取引に応じてもらえず、倒産する可能性が高いわけです。

 

このような「倒産の増加」で地域経済が悪影響を受けると、同地域のほかの金融機関も不良債権が増加して倒産する、といったことになりかねません。

 

この辺りについては、拙稿『深刻化するコロナ不況…中小企業と銀行「倒産の連鎖」は杞憂か』に詳述しているので、ご参照いただければ幸いです。

銀行同士が「資金の貸借」をしなくなって…

銀行の倒産可能性が出てくると、一般預金者による「取り付け騒ぎ」も心配ですが、銀行相互の資金貸借が止まってしまう可能性のほうが高く、影響も広範囲に及びかねません。

 

「よその銀行に資金を貸して、万が一倒産されたら大損だ。だから資金を貸すのはやめておこう」と考える銀行が増加すると、「自分が資金を借りたくなっても、ほかの銀行が貸してくれなかったら大変だ。金庫に札束を積み上げておかないと不安で仕方ないから、貸出は控えめにしよう」と考える銀行も増加します。

 

つまり銀行は「自分の資金繰りが心配だから、客からの融資の要請に応じられない」というわけです。つまり、貸し渋りです。

経済評論家

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と無関係に個人として行なっているものであるため、現職欄には経済評論家と記すものである。

著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。

趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

連載経済評論家・塚崎公義の「身近なテーマで経済センスを磨く」実践講座

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