増え続けるマンションの「空き室」。それでもマンションの新設着工戸数の勢いは止まらない。こうした「マンション余り」が問題となるなか、建て替えもできず耐震対策の進まない古いマンションが危険視されている。命の危険の可能性もある空き室だらけのマンションを放置しておけば、行きつく先はスラム化である。今こそ立地や設備のイーズを正しく踏まえた価値のあるマンションを建て、危険な古いマンションに関しては、政府主導で対策をたてていくべきだ。*本記事は、一級建築士である熊澤茂樹氏、安井秀夫氏の共著『これからのマンションに必要な50の条件』(幻冬舎MC)から抜粋、再編集したものです。

以下の図表2はマンションのストックのみのデータではありませんが、東京のマンションの5分の1以上が旧耐震基準で造られていることを示しています。

 

[図表2]東京の建築時期別のマンション戸数(2013年末時点)

*旧々耐震基準…1971(昭和46)年改正以前の基準。
*旧耐震基準……1981(昭和56)年改正以前の基準。
*新耐震基準……1981(昭和56)年改正による基準。中地震(マグニチュード5以上7未満)では損傷せず、大地震(マグニチュード7以上)でも倒壊しないことを追加。
総務省「住宅・土地統計調査」、東京都都市整備局「住宅着工統計」より

 

政府もただ手をこまねいているわけではなく、改正マンション建替え円滑化法(2014年)のほか、建て替えによる売却が成立したときに、特別控除や長期譲渡所得の軽減税率を設けるなど、さまざまな方法で建て替えを促しています。

 

しかしストックの問題を適切に解消するには、もう一歩踏み込んで実状を見ていく必要があるのではないでしょうか。

 

ストックがあるから新しいマンションを建てる必要がない、とはいえません。少子高齢化の時代でも新しい命が生まれてくるように、今こそ立地や設備のニーズを正しく踏まえて価値のあるマンションを建てるべきです。

 

そのようなマンションを有効な資産として継承し、建物本来の寿命を全うさせることが真のサステイナビリティだといえるでしょう。

 

そして同時に、現状のストックを有効に活かし市場に流通させるとともに、不要なストックに引導を渡し適切に建て替えるには、ある程度の強制力をもって臨む必要があるかもしれません。

 

この点については政府も注目しており、重要な施策として数値目標も立てられています。住宅ストックを〝負の遺産〞にしないために、今が正念場なのです。

 

 

熊澤 茂樹

生和コーポレーション株式会社 設計部副部長
美術学修士
一級建築士
賃貸不動産経営管理士
愛知県立芸術大学大学院非常勤講師

 

本連載は、2018年2月28日刊行の書籍『これからのマンションに必要な50の条件』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

これからのマンションに必要な50の条件

これからのマンションに必要な50の条件

熊澤 茂樹,安井 秀夫

幻冬舎メディアコンサルティング

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