新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

ソフトウェアが不動産価値を決める

しかし、これからはオフィスや住宅といった「ハコ」に対するハードとしての付加価値を考えるのではなく、「ハコ」の中身である「ソフト」を構築する時代になったのです。

 

簡単な事例がパソコンです。パソコンはそれまでは大型の計算機の域を出なかったコンピューターが、個人で利用できる端末になった点で画期的なものでした。IBMやNEC、富士通といったブランドで私たちはパソコンを買い求めました。私たちはいわばパソコンというハコを選んでいたともいえます。

 

ところが今、パソコンをハコで選んで買う人は皆無でしょう。

 

Windows95の出現 以来、私たちの職場での働き方は激変しました。その後グーグルの誕生はパソコンを検索機械へと変身させました。

 

いまやスマートフォンは電話の機能というよりもメール、ライン、フェイスブック、インスタグラム、ツイッターなどさまざまな通信機能や、カメラ、ビデオ、ゲーム機能を併せ持った、ものすごく高性能な「ハコ」に進化しています。

 

今や、このハコの中身であるソフトウェアの充実が、多くの人がスマホを手にする動機になっています。

 

不動産についても、今後はハコの中で行なう事業の中身を企画提案していくビジネスに変わっていくと私は見ています。ですからハコは何も「最新」のものでなくてもかまわないということです。

 

現代社会ではよくイノベーションという単語が使われるようになりました。新たなソフトウェアを組み立ててまったく新しい価値観の社会を作り上げるためには、多くの分野の知見が必要になってきます。そしてそれらの知見を組み合わせてこれを一つのソフトウェアにまとめていく役割も必要になってきます。

 

同じように不動産の世界でも、これまでとはまったく異なる世界からの知見の輸入が必要になってくるのです。ハードを作ることとソフトウェアを企画立案することでは、使う脳みそがまるで異なります。これは、現在の不動産業界の人間だけではこれからの時代を生き抜いてはいけないということを、意味しています。

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