新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

不動産は手を加えながら価値を高めていく

水回りが刷新されるとその知人の話では「生活が一新した」ほどのインパクトがあったそうです。

 

さらにお子さんがいた部屋の家財道具を整理し、子供の持ち物はすべて処分。各部屋をシングルベッドと簡単な机だけにして、いつ子供が帰ってきても宿泊はできるように設えました。知人の家は京都にアクセスが良いので将来的には民泊などで「稼げる」ようにしておこう、との思惑もあったようです。

 

牧野知弘著『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)
牧野知弘著『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)

またこのリノベーションを機に「断捨離」を実現、すっかり身軽に生活もリノベーションしたということです。今後この家が空き家になっても、子供たちが民泊などで自由に活用できるようにしておけば、自分たちがいなくなった後の将来も安心というわけです。

 

築25年くらいでは最近の家はびくともしません。以前はたとえば40歳すぎで戸建て住宅を買って30年もすれば多くの人が亡くなるか、病院や高齢者施設に入っていたので、耐用年数はそのくらいで十分でした。

 

しかし今は、人生90年時代といわれます。定年退職してもまだ30年近い人生を送ることを考えれば住宅はそのつど建て替えるのではなく、適宜手を入れてその価値を維持していくこと、そしてその価値が正しく評価される市場の整備が求められているのです。

 

最近では大手デベロッパーも新築マンション一本やりではなく、都心の優良立地にあるマンションなどを、一棟丸ごとリノベーションして再分譲するなどのプロジェクトを展開し始めました。既存建物を取り壊して更地として、新しい建物に建て替えるには、解体費や建設費が高騰していて採算がとれない、そこで既存建物の価値を認め、既存建物を磨いてさらに価値を高めようという試みになったわけです。

 

不動産は手を加えながら価値を高めていけば、流通市場でも評価される、そんな時代が不動産バブル崩壊後はやってきそうです。

 

牧野 知弘
オラガ総研 代表取締役

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