新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

安易な相続税の節税対策が招く一族の崩壊

つまり、一般のマーケット相場に比べて著しく高い賃料を支払っている場合には、借家料の減額が法的にも認められるのが、日本の法律なのです。当然ですが、これまでの空室のリスクやマーケット賃料との乖離分を穴埋めしてきた業者側も、大きな損失をすでに被っているケースが多いのがバブル崩壊です。お互いさまとはいえ、不動産を実際に所有しているのはオーナー側です。事業上のリスクの顕在化に気づかされるのは、まさにこのバブル崩壊時だというわけです。

 

賃料収入が下がり、金利は上がって返済できなくなる。こうしたアパートオーナーが続出することがバブル崩壊時には容易に予想されます。

 

同様に、湾岸のタワーマンションなどを相続対策で購入した富裕層にも、大きなリスクが降りかかりそうです。タワーマンションは、上層階と下層階で販売価格に大きな価格差があります。相続時の不動産評価額はこれまで、マンションの階数には関係なく、土地は路線価額、建物は固定資産税評価額を基準に算定されてきたので、高層階ほど時価と評価額の乖離が大きく、相続税の節税に効果が高いと喧伝されてきました。実際に湾岸エリアに限らず、多くのタワマンで高層階は外国人投資家と相続対策のために購入した個人富裕層による購入で占められてきました。

 

たしかに相続税の節税効果は高いのですが、バブルが崩壊して外国人投資家が「売り逃げ」を図ると、マンション相場は下落に向かいます。ところが、相続対策で買った人たちは、相続が発生しない限り節税効果は享受できないので、相場が下がっていっても「売るに売れない」状態に陥ります。

 

問題なのはこうした層は、節税効果を高めるためにハイレバレッジ、つまり購入価格のほとんどを借入金で購(あがな)っていることです。価格が借入金の元本以下に下がれば、借入金を返済できなくなる恐れが顕在化します。

 

そしてこれらの借入金の多くは、購入者が高齢であることから相続人である子供や孫を連帯保証人にしています。おじいちゃんが亡くなって、たしかに節税は享受できても、その後に残ったタワマンが売れない、賃貸に出しても思ったような賃料でテナントが入らない、などという事態を、購入時にはあまり想定していない可能性が高いのです。

 

アパート投資もタワマン節税も根っこは同じです。子供や孫に相続税の負担をかけまいという親心が、多額の借入金という「とんでもない置き土産」を残して天国にいってしまう、「バブル崩壊」が「一族崩壊」につながってしまうのです。

 

牧野 知弘
オラガ総研 代表取締役

 

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