介護が必要になる自分を想像できない
私は、自身が介護保険業界の末席にいる身分として、いつも考えていることがあります。それは、日本の医療保険制度(皆保険制度)は、本当に助かる制度だということです。私は医療の専門家ではないので、日本の医療保険制度が直面している課題についてはよくわかりません。しかし、日々医療サービスを受けている消費者の立場で考えた場合、医療保険の存在には本当に感謝しています。
毎月、医療保険は給料より天引きされています。が、今の金額については納得感があります。もちろん現状は、1年間に私が支払う医療保険料の合計は、私が医療機関に支払っている自己負担分を加えた医療費総額よりも多いはずです。つまり、自分の収支は赤字だと思います。しかし納得感はあります。
それは、いずれ大病した時に恩恵を受けることをイメージできているからです。人は生まれたその瞬間から死に向かって生きていると言います。私もそうですが、多くの人が高齢期になると病気にかかり、その病気はおそらく癌です。その治療のためには手術と入院が必要不可欠で、莫大な費用がかかりますが、そのほとんどは医療保険制度で解決できると思っています。
医療は自分の命に直結することなので、無意識に納得をしているのかもわかりません。これに引き換え、介護保険制度はどうでしょうか? 私を含む多くの国民にとって、医療保険ほど重要だという認識はないのではないでしょうか。私もそうですが、自分が癌か脳疾患で死ぬようなイメージは何となく理解できていますが、自分が認知症になったり、手足が不自由になったり、排泄が自力でできなくなったりするイメージはわかないのが現実です。
私のように身近に多くの要介護者を見てきた者であっても、自分がそうなるというイメージがなかなかわかないのです。おそらく、医療と介護の違いは、民間の保険の数の違いと同じだと考えています。生命保険や医療系の保険は現在世間には山ほどあります。ありすぎて、何がなんだかわからないぐらいです。それに引き換え、民間の介護系の保険は、まだまだ少数にとどまっているのが現状です。
保険の話をすると、読者の中には「だまされないぞ」と感じる方も多くいると思います。しかし、私が実感していることは、お金のある人、資産のある人や所得が高い人の場合は、保険は不要だと思いますが、お金の無い人、所得の少ない人の場合は保険を活用しない手はない、ということです。そういう私も自分の保険のことになると、二の次三の次になってしまっているのが現実ですが……。
小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役