本連載の執筆者・吉岡憲章氏は、60歳を過ぎてから多摩大学大学院の門戸を叩き、77歳で経営学博士号を取得した。1000社を超す中小企業の経営改革の実践的指導・支援を行っている同氏は、『定年博士 生涯現役、挑戦をあきらめない生き方』(きずな出版)にて、博士号を獲得するに至った自身の経験談を記している。

「経営コンサルタント」は信用に値するのか?

経営コンサルタントの場合はどうでしょうか? 経営コンサルタントの場合は、ある程度、経営のことを勉強しています。しかし、ほとんどの経営コンサルタントは、自分自身が経営そのものをしたことがありません。専門的に野球をしたことがない人が、いくら専門書を読んでもプロ野球のコーチをすることは無理でしょう。

 

同様に、経営コンサルタントも経営をしたことがありませんから、社長の心の中を、わが事として理解することは困難です。さらに、経営分析数字からの情報は理解できますから、表面上の問題点はわかりますが、それをどうやったら、本当によくなるのか、肝心の解決のための手法がわかりません。したがって、根本的な対策がなされないまま、時は過ぎてゆき、やがて、企業としての死である倒産を宣告されることになるのです。

 

私の場合は、わが国に中小企業に対する再生コンサルタントという概念がなかった40年以上前から経営再生を指導支援してきましたので、1100社ほどの中小企業の再生に携さわってきました。その指導した企業も多くは、金融機関や税理士などから、再生指導を要請された破綻間近の窮境状態にある中小企業です。

 

このように再生指導した企業のうち、1〜2年間で黒字転換したり、成長路線に乗ることができた、すなわち再生できた企業が800社くらい。それ以上の期間をかけましたが再生できた企業が200社くらい。残りの100社ほどが、残念ながら自主再生できずに法的再生や清算せざるを得なかった企業です。ほかにこれほどの再生実績、再生確率を出している例はわが国ではないと思います。そのような再生指導実績が誇れるのは、実はこの博士論文で研究した、再生に対する手法があるからだと思います。

 

■「企業は経営者次第」を証明する

 

どうして博士論文の研究が実績の結果につながっているかについて、順を追って説明しましょう。

 

「中小企業は社長次第」というフレーズが、当たり前のように語られます。また、金融機関も経営コンサルタントも識者も同様の発言をします。

 

それでは、なぜ中小企業は社長次第なのでしょうか。社長の経営者意識の何が問題で、それをどのようにすればよいのか、という分析は見かけません。当たり前すぎると思うのか、周囲もそれに甘えて、それ以上究明するための分析や思考もせず、それで済ませてしまっている面があります。

 

なぜ中小企業では大企業より社長が決め手なのか。その社長のどのような意識を、いかなる指導手法を使って変革させると、会社は再生に向かうことができるのか、という点を究明したのが、私の博士論文です。

 

大企業における社長は、会社の意思決定の責任者の立場ですが、いかにワンマン型社長といえども、取締役会などの議論や承認なしに決定し、実行に移行することは多くの場合難しいと言えます。

 

さらに、実行に移しても、成果が出なければ株主によって厳しい評価がなされます。また、社長の奔放で筋の通らない行為が発覚しますと、監査法人の厳しい目にさらされることになります。大きな話題となった日産自動車の経営者が起こしたコンプライアンス問題なども、その例にあたります。

 

さらに、諸課題の解決にあたって、社長から実行部隊に対して直接に指示命令することも基本的にはあまりありません。大企業は組織を大事にしますから、末端に対して直接指示を出すことは組織を飛び越すことになるからです。

 

一方、中小企業の社長の場合はどうでしょうか。

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