同居している、あるいは実家の近くに住んでいて親の面倒を見ている兄弟姉妹が、生前に財産を消費してしまっていることが原因で「争族」となってしまうケースは、非常に多くあります。このご家族の場合も裕福だった父親が億を超える預金を母親に遺しましたが、その母親が亡くなった後の二次相続でわかったのは銀行残高が数十万円にまで激減していたことでした…。 ※本記事は、一般社団法人相続終活専門協会代表理事・江幡吉昭氏の書籍 『プロが教える  相続でモメないための本』(アスコム)より一部を抜粋したものです。

父の死後「億単位にのぼる資産」を受け継いでいたが…

奈津美さんも秋絵さんに同調する。

 

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「引き出した現金には色も名前もついていませんからね……。お姉さまがお母さまのお金を使い込んでいたとしても、それを立証することは非常に難しいのです」

 

同席した弁護士がそう説明します。

 

おふたりが少し落ち着いてきたところで、今回の「争族」が起きた背景を解きほぐしていくため、ご家族の時間を少し巻き戻していただくことにしました。

 

このご家族のお父さまは、実家が東北地方で代々造り酒屋を営まれていて、地元では知らない人がいないほどでした。とても経営手腕の優れた方で、現代の若い方にも好まれる日本酒を開発してヒットさせ、会社をさらに大きくして多額の資産を築かれたのです。

 

お父さまはその後、経営から退く際に、お母さまに自社株を引き継ぎました。彼女はそこから経営に携わることもできたのですが、あえて株式を売却し、夫婦は会社から距離を置いたのです。したがって、お父さまが亡くなった時点で、目立った資産は自宅と現預金と生命保険くらいのものでした。それでも億単位にのぼる資産を遺されたわけですが……。

 

「探しても探してもない」姉妹の結末は…
「探しても探してもない」姉妹の結末は…

この一次相続の際に3姉妹も1000万円ほどの遺産を手にしたこともあり、全員が納得の上で遺産分割協議を終えました。

 

「私と秋絵は結婚して、横浜と東京にそれぞれ引っ越したのですが、お姉ちゃんだけは地元で結婚したので実家から車で数分の距離に住んでいました。それもあって、お母さんは近くにいてくれたお姉ちゃんへの思いは強かったのでしょう」

 

私は相づちを打ちました。

 

「そうでしょうね。その頃、皆さんの仲はどうでしたか?」

 

「秋絵はみんなにかわいがられていたけど、私とお姉ちゃんはよくケンカしてました。もともと仲は良くなかったと言えます。でも、私達に子どもができた後は、おたがいに家族で行き来するようになりました。ここ10年ほどは、けっこう仲良くしてたんですよ……」

 

「お母さまのお体の具合は、いつ頃から悪くなったのですか」

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プロが教える 相続でモメないための本

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江幡 吉昭

アスコム

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