いい老人ホームだと近所で評判だったのに、入居したら酷い目に遭った――。老人ホーム選びでは口コミがまるで頼りにならないのはなぜか。それは、そのホームに合うか合わないかは人によって全く違うから。複数の施設で介護の仕事をし、現在は日本最大級の老人ホーム紹介センター「みんかい」を運営する著者は、老人ホームのすべてを知る第一人者。その著者が、実は知らない老人ホームの真実を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『誰も書かなかった老人ホーム』(祥伝社新書)の抜粋原稿です。

売上の約半分を税金に依存している老人ホーム

お金の話をつづけます。

 

有料老人ホームの場合、土地、建物の取得に対する費用は、社会福祉法人が運営している特養と違い、すべてを自己資金または金融機関からの融資で賄っています。つまり、行政機関からの「補助金」や「助成金」はありません。したがって、一般的な民間企業とまったく同じスキームで事業をしているのだと理解していただければOKです。当然、収益に対する税金なども、一般企業とまったく同じです。

 

小嶋勝利著『誰も書かなかった老人ホーム』(祥伝社新書)
小嶋勝利著『誰も書かなかった老人ホーム』(祥伝社新書)

毎月の収入は、「月額利用料」「介護保険報酬」「自費サービス費用」から成り立っています。

 

「月額利用料」とは、老人ホームの家賃や管理費、食費などから構成され、入居者は全額を自己負担することになります。

 

「介護保険報酬」について、ここでは介護付き有料老人ホームの場合で説明をしていきます。入居者は要介護度に応じて事前に介護報酬(区分限度額)が設定されています。

 

自費サービス費とは、老人ホーム側が用意している「+α」のサービスに対する費用で、いわゆるオプションというものです。入居者が買い物へ行く時の付き添いサービス費として〇〇円、という具合です。老人ホームにより月額利用料金の中に含有している場合もあり、取り扱いは老人ホームによってまちまちです。

 

いずれにしても、老人ホームの毎月の収入は、この3つの収入の合計金額になります。月額利用料が20万円(家賃10万円、管理費5万円、食費5万円)と要介護2の入居者の場合の介護保険報酬20万円と自費サービス費用となり、月額40万円+αとなります。

 

このケースの場合、月額40万円の収入のうち、約半分は公的な「お金」。売上の約半分を公的な資金に依存しているのが老人ホームの事業スキームなのです。なお、公的資金の内訳を正確に申し上げると、40歳以上の人が負担している介護保険料と国と地方自治体が負担している税金、というわけです。

 

老人ホームが増えれば増えるほど、そして入居者が増えれば増えるほど、高齢者介護保険市場の規模は大きくなりますが、当然、その分、公的資金の投入額も多くなってしまいます。

 

高齢者介護業界が大きくなればなるほど、成長すればするほど、この50%程度の負担が比例して増えていくので、支払い原資の確保をどうするのか、という流れになっていきます。最近、よく言われているのは、40歳以上に負担してもらっている介護保険料支払い対象年齢を引き下げるとか、介護保険料を値上げするとか、収入や資産のある高齢者の負担を3割や4割に変更したい、ということです。さらに、介護保険報酬自体を下げるという話も出ていますので、老人ホームは現在の介護保険報酬に依存している経営体質をどう変化させていけばよいのかを、日々考えなければならないご時世になってきています。

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誰も書かなかった老人ホーム

誰も書かなかった老人ホーム

小嶋 勝利

祥伝社新書

老人ホームに入ったほうがいいのか? 入るとすればどのホームがいいのか? そもそも老人ホームは種類が多すぎてどういう区別なのかわからない。お金をかければかけただけのことはあるのか? 老人ホームに合う人と合わない人が…

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