いい老人ホームだと近所で評判だったのに、入居したら酷い目に遭った――。老人ホーム選びでは口コミがまるで頼りにならないのはなぜか。それは、そのホームに合うか合わないかは人によって全く違うから。複数の施設で介護の仕事をし、現在は日本最大級の老人ホーム紹介センター「みんかい」を運営する著者は、老人ホームのすべてを知る第一人者。その著者が、実は知らない老人ホームの真実を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『誰も書かなかった老人ホーム』(祥伝社新書)の抜粋原稿です。

職員が困らないように立ち振る舞う元役員

また、別の入居者の話です。Cさんは元大手日用品メーカーの人事担当取締役でした。人事担当だったからというわけではないでしょうが、介護職員の心を掴むのが非常に上手で、多くの介護職員が彼のファンでした。Cさんを見ていると次のようなことがわかります。

 

すでに他界して家族がいない彼にとっては、介護職員が自分にとっての家族なのか、介護職員の相談事などにも乗ってくれ、面倒をよく見てくれます。さらに、さすがなのは、介護職員の愚痴や会社に対する不平不満についても、話をよく聞いた上で、諭すように会社員としての立ち振る舞いを教授してくれることです。介護職員も、Cさんがそう言うのなら、もう少し頑張って働いてみようという気になるそうです。

 

「Cさんすいません、今日の入浴の時間は予定では11時だったけど、都合が変わって13時からになってしまいました」と介護職員が言うと、「かまわないよ」と気持ちよく応じてくれます。「今日の外食先はお寿司屋ではなく焼肉屋に変更になりました」と言えば「ノープロブレム」と。

 

単なる物わかりがいいというよりも、全体の態勢を考えて、職員が困らないように立ち振る舞ってくれる、という感じです。「きっと入居者の〇〇さんが焼き肉が食べたいと、ごり押しをしたんだろう」という裏事情までお見通しです。もちろん、われわれ職員に非がある場合は、厳しく注意をされたことは言うまでもありません。

 

小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役

誰も書かなかった老人ホーム

誰も書かなかった老人ホーム

小嶋 勝利

祥伝社新書

老人ホームに入ったほうがいいのか? 入るとすればどのホームがいいのか? そもそも老人ホームは種類が多すぎてどういう区別なのかわからない。お金をかければかけただけのことはあるのか? 老人ホームに合う人と合わない人が…

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