職員が困らないように立ち振る舞う元役員
また、別の入居者の話です。Cさんは元大手日用品メーカーの人事担当取締役でした。人事担当だったからというわけではないでしょうが、介護職員の心を掴むのが非常に上手で、多くの介護職員が彼のファンでした。Cさんを見ていると次のようなことがわかります。
すでに他界して家族がいない彼にとっては、介護職員が自分にとっての家族なのか、介護職員の相談事などにも乗ってくれ、面倒をよく見てくれます。さらに、さすがなのは、介護職員の愚痴や会社に対する不平不満についても、話をよく聞いた上で、諭すように会社員としての立ち振る舞いを教授してくれることです。介護職員も、Cさんがそう言うのなら、もう少し頑張って働いてみようという気になるそうです。
「Cさんすいません、今日の入浴の時間は予定では11時だったけど、都合が変わって13時からになってしまいました」と介護職員が言うと、「かまわないよ」と気持ちよく応じてくれます。「今日の外食先はお寿司屋ではなく焼肉屋に変更になりました」と言えば「ノープロブレム」と。
単なる物わかりがいいというよりも、全体の態勢を考えて、職員が困らないように立ち振る舞ってくれる、という感じです。「きっと入居者の〇〇さんが焼き肉が食べたいと、ごり押しをしたんだろう」という裏事情までお見通しです。もちろん、われわれ職員に非がある場合は、厳しく注意をされたことは言うまでもありません。
小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役