東京都在住の清子さんは、夫の遺産相続時に子どもたちがもめたことを教訓として、生前に公正証書遺言を作成しました。ところが清子さんの死後、長男は「こんな遺言は認めない」と激高。この「争族」の背景にあったのは、兄弟間の収入格差と怨恨(えんこん)でした。 ※本記事は、一般社団法人相続終活専門協会代表理事・江幡吉昭氏の書籍 『プロが教える  相続でモメないための本』(アスコム)より一部を抜粋したものです。

「俺ばっかり貧乏くじだよ!」長男の横暴な言い分は…

「お父さんの遺言がないから、遺産分割を話し合わなくちゃいけないんだけど。私もそういうの疎(うと)いから、無料相談会で相談してみたの。そうしたら弁護士さんが『法定相続分』で分ければいいと教えてくれたの」

 

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そう言って母の清子は、弁護士との話をまとめたメモを読み上げた。続いて淳次が、清子の言った話を要約する。

 

「要するに遺言がない場合、民法で『法定相続分』という遺産分割基準があるから、それに従えってことだね。これによると配偶者つまりお母さんが2分の1、僕ら兄弟が残り2分の1を分けるってことだよね。まあ、それでいいんじゃないの」

 

すると、黙って話を聞いていた一樹が不満そうに口を開いた。

 

「母さんが2分の1を相続するのはいいけど、残り2分の1を俺と淳次で分けるってことだよな?」

 

「うん。つまり、それぞれ4分の1ずつ受けとるってことだね。それでいいんじゃないかな」と淳次。

 

「ちょっと待てよ。なんでお前と俺が対等なんだ? 俺は長男だし、お前んちは金も家もあるんだから遺産なんかいらないだろ」

 

突然、乱暴なことを言い出した一樹に清子は慌てた。

 

「ちょっと一樹、何を言い出すの。あんただってお金も家もあるでしょ」

 

「はぁ、うちはオンボロだし、定年退職したから、これからは年金暮らしだよ。だいたい父さんも母さんも淳次には甘過ぎるんだよ。いつだって俺ばっかり貧乏くじだよ!」

 

一樹は怒りを爆発させ、積年の恨みを一気に並べ立てた――。

 

■一時相続は決着しても兄の不満は収まらず

 

「つまり、お兄さまは高卒で就職したのに、淳次さんは一流大学に入った上に、大手商社に就職できた。自分だって大学に行かせてもらえれば、大企業に入って裕福な生活が送れたはずだと。これがお兄さまの主張ですね。たしかに理不尽ですが、お兄さまの頭の中では、その考えが正当なんでしょうね」

 

私は、淳次さんに同情しました。

 

「そうなんです。だから自分は遺産をたくさんもらう権利があると言い出し、もう何を言っても聞いてくれませんでした」

次ページ一応の「解決」後も、長男の理不尽な行動は続いた
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江幡 吉昭

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