世界的に超低金利時代へ突入している。そんな状況下、新型コロナウイルスの感染拡大で、事態はまさに「打つ手なし」。しかし、ここにきて注目されているのがMMT(現代貨幣理論)である。有識者から袋叩きにあい、さらにネット上でも支持派と否定派が議論を繰り広げている。MMTは救世主なのか、トンデモ理論なのか。本連載は、経済アナリストの森永康平氏の著書『MMTが日本を救う』(宝島社新書)を基に、MMTとはどんな理論なのかをわかりやすく解説していく。過去の著書には父・森永卓郎との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)がある。

ぶっちぎりの最下位…IMFもドン引く日本の財政状況

日本の財政状態は消費増税をしてもなお厳しい状態にある。それでは、他国と比較すると日本の財政状況はどれほど厳しいのか。GDPに対する債務残高の比率を比較してみよう。

 

IMF(国際通貨基金)が発表している『World Economic Outlook』によれば、日本の債務残高の対GDP比は235%で、全188カ国中188位と最下位である。主要7カ国(G7) の中でも財政不安の印象があるイタリアの131.3%より、遥かに高い比率だ。

 

そして債務残高から政府が保有する金融資産(国民の保険料からなる年金積立金 など)を差し引いた純債務残高の対GDP比を見ても151.1%となっており、全89カ国中88位となっている。

 

このような日本の財政状態を国際機関はどのように見ているのか。OECD(経済協力開発機構)は19年4月に公表した『対日経済審査報告書』の中で次のように評している。

 

「日本は具体的な歳出削減と税収増加策を盛り込んだ包括的な財政健全化計画とともに、その実行を担保する財政政策の枠組みの強化を必要としている。OECDの試算によれば、 60年までに政府債務残高GDP比を150%にまで低下させるためには、GDP比5%から8%程度の基礎的財政黒字を維持することが必要である」

 

「日本は主として消費税に依拠して歳入増加を図るべきである。(中略)十分な水 準の基礎的財政黒字を消費増税のみによって確保するためには、OECD平均である19%を超え、税率を20%から26%の間の水準へと引き上げることが必要となる」

 

OECDの見方がいかに厳しいものかわかるだろう。消費増税をして消費税率を10%に引き上げたことで、日本経済は一気に悪化した。そして、増税が経済への悪影響を及ぼすことは増税のたびに証明されてきた。それでもなお、十分な水準の基礎的財政黒字を消費増税のみによって確保するためには、OECD平均である19%を超え、税率を20%から26%の間の水準へと引き上げることが必要とされているわけだ。

 

またIMF(国際通貨基金)は18年11月に公表した『対日4条協議審査報告書』の中で次のように評している。

 

「増大する社会保障費を賄い、債務の持続可能性のリスクを下げるために、財政健全化は消費税率を少なくとも15%まで段階的に引き上げることを中心として進めるべき。これはGDPや将来世代も含めた福祉に対する負の影響が比較的小さいことから、好ましい政策手段である」

 

IMFも消費増税率を少なくとも15%まで段階的に引き上げることを提唱しており、国際機関から見れば、日本の財政状態はそれほどの対応をしないといけないという危機的状況にあるという認識なのだ。

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