対策は内容量をこっそり減らす「ステルス値上げ」
本題に戻ろう。たとえば、ある企業が1パック10個入りの飴を100円で売っていたとする。原材料費など生産コストが上昇してきたため、翌年は120円に値上げしたとする。毎年順調に経済が成長し、物価も家計所得も上昇していれば、企業側の合理的な値上げに対して家計は買い控えを起こさない。
だが、日本のように経済成長が緩やかで、物価も家計の所得も上昇しない国だと、多少の値上げすら死活問題であり、消費者は鮮明に拒否反応を起こして物が売れなくなる。そこで、日本では多くの企業が値段は据え置いて、内容量を減らすという事実上の値上げをするようになったこれが「シュリンクフレーション」だ。
先程の例で言えば、100円から120円に値上げしたいが、値上げをすると買ってもらえな くなる。そこで売価は100円のままにしつつも、個数を減らして1パック8個入りにするという具合だ。「シュリンクフレーション」に「ステルス値上げ」という異名がついているのは、事実上の値上げをバレないように細工しているからである。
内容量が減ってもパッケージや容器の大きさは変わっていないわけだから、かなり注意していないと気づかない。読者のなかでも、お気に入りのお菓子やアイスを買って家に帰り、いざ開けてみると中身がスカスカと感じた経験がある方は多いだろう。
※使用されているデータは執筆された2020年3、
森永 康平
金融教育ベンチャーの株式会社マネネCEO
経済アナリスト