新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

実家は「放置」するか「賃貸」か

そこで彼らが目を向ける選択肢が2つです。「放置」するか「賃貸」して運用するか、です。「放置」する最大の理由は面倒くさいからです。人生80年時代にもなると、親はなかなか死にません。ということは、時間の経過とともに家財道具は増え続けます。


 
団塊ジュニアが目にするのは、実家に残された膨大な量の家財道具です。片付ける時間も気力もないのでとりあえずは放置して、たまに家の空気を入れ替えたりする程度の現状維持作戦という名の「問題先送り」を試みます。

 

牧野知弘著『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)
牧野知弘著『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)

しかし、戸建て住宅は意外と維持費がかかります。庭の草木は伸び放題となり、小動物が棲みついたりすれば近所から苦情の嵐となります。年に数回の芝刈りや草木の剪定だけでもその費用は馬鹿になりません。マンションであれば、住んでいようとなかろうと毎月管理費、修繕維持積立金の支払いを求められます。


そしてとどめを刺すのが5月に届けられる固定資産税、都市計画税の納税通知書です。不動産は主がいなくなって使われていないものであっても、相続人に対して容赦なく請求されます。


こうした思わぬ費用負担に驚いて次に考えるのが「貸せばいいじゃん」ということでしょう。ところが、これも甘い考えであることがすぐにわかります。


自分たちですら、不便で愛着もないので都心居住を選んでいるのに、自分たちが捨てた家を今さらありがたがって借りてくれる人は、ほとんど存在しないのです。せっかく家財道具を片付けて、リニューアルなどを施しても、ニーズのないところには借り手は現われてはくれません。 

 

彼らが最終的に行きつくのが「とにかく売ろう」ということです。首都圏ではさすがに「まったく売れない」という住宅地はまだそれほど目立ってはいませんが、一部エリアでは、売却しようにもそもそも買い手がいない、あるいは一軒が150万円から200万円といった「車並み」の値段でしか買い手がつかないようなエリアも出現し始めています。


 
ということは、売るならば早いもの勝ちです。へたをすると永遠に税金を払い続けなければならない親の家を、ジュニアたちは持て余し、これらの家が大量に市場に出回り出すのは近い将来必定なのです。

 

牧野 知弘
オラガ総研 代表取締役

不動産で知る日本のこれから

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牧野 知弘

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業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊

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