相続で家族がもめるなんて大金持ちだけの話だと思っていませんか。実際には、むしろ遺産が少ないからこそ「争族」が起きてしまうのです。ここで紹介する家族は、株や現金を合わせて約500万円しか遺産がありませんでした。それでも「争族」になった理由とは? ※本記事は、一般社団法人相続終活専門協会代表理事・江幡吉昭氏の書籍 『プロが教える  相続でモメないための本』(アスコム)より一部を抜粋したものです。

足早に去る長男…妹は「待って、それはおかしいよ!」

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「父さんのときと同じってことだね」

 

次女の由紀子がつぶやく。

 

「まあ、そういうことになるかな。母さんがこういう遺言を遺した以上、それに従うということで異論ないよね?」

 

と良一が念を押す。3姉妹は曖昧(あいまい)に頷(うなず)き、彼の次の言葉を待った。

 

「じゃあ、後の手続きは俺がやっておくから」

 

良一はそう言い放ち、これで話は終わったとばかりに立ち上がった。3姉妹は顔を見合わせて少し慌てた。

 

「あのさ、今回はいくらもらえるのかな?」

 

由紀子が切り出した。「いくらって?」と良一。

 

「ほら、父さんのときも財産は全部母さんと兄さんが受け継いだけど、その分私たちにはお金を分けてくれたじゃない」

 

良一は怪訝(けげん)そうな表情で答える。

 

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『プロが教える 相続でモメないための本』
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「あのときはそうだったけど、今回お母さんは財産なんて遺してないんだよ。父さんの財産は、お母さんがこの十数年で使っちゃったから、もう何も遺ってないの。だから、分けたくても分けるお金がないんだ」

 

兄の思わぬ言葉に、裕子は目を見開いた。

 

「ちょっと待って。それは話が違うよ。兄さんは全部財産を受け継ぐんでしょ、なんで私たちには何もないわけ? それに見合うお金を払ってくれるのは、当然でしょ」

 

「だって、母さんの遺言にそう書いてあるじゃない。父さんのときは遺言がなかったから、俺と母さんでみんなにも遺産を分けた方がいいって決めたんだ。それでみんなも納得してくれた。だけど今回はそもそも遺産がないから、分けるもへったくれもないし」

 

良一はそう言い放つと、背を向けて部屋を出ようとした。長女の裕子は思わず大声を上げる。

 

「それはおかしいよ!」

 

そして3姉妹はいっせいに良一へと詰め寄り、話は平行線のまま、夜通し言い争いが続いた――。

 

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■財産は消えても遺恨は消えず

 

良一さんとお母さまは、お父さまの財産を継いだ後、いつの間にかそのほとんどを失っていたのです。

 

早い時期に株の信用取引で失敗し、保有していた全ての株を手放すはめになってしまいました。ひとつがダメになると、転がり落ちるのは速いものです。

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プロが教える 相続でモメないための本

プロが教える 相続でモメないための本

江幡 吉昭

アスコム

「財産が少ない」「家族はみんな仲がいい」 実は、こんな人ほど相続争いの当事者になりやすい。3000件の相続を手がけたプロが教える、相続をスムーズに進めるためのノウハウが満載。相続初心者のための相続のイロハも併せて…

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