いつの時代もなくならない相続トラブル。「生前しっかり話し合ったから大丈夫」…ではないのです。相続発生後、まさかの事態が起きてしまったら? 今回は、相続した不動産が「事故物件」として扱われてしまった実例を、相続終活専門協会代表理事・江幡吉昭氏が解説します。 ※本連載は遺言相続.com掲載の事例を編集したものです。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

相続のプロの解説:相続人が払った解体費用の総額は…

■相続放棄された残置物はどうなるのか

 

今回のケースの場合、買い手の条件に応じるためには、建物の解体・撤去が必要です。建物内にある残置物のなかに院長の所有物があれば、相続人は放棄しているので問題ありません。しかし、「誰のものか分からないもの」は勝手に処分できないため、解体・撤去ができない状況になってしまったのです。

 

 

通常であれば、家庭裁判所に相続財産管理人を申し立てて、選任する方法が一般的ですが、選任するにあたっては預託金(一般的には100万円前後)が必要です。また、財産を管理するにも非常に時間を要し、数年かかることもあります。

 

しかし、「曰く付き」の物件になってしまったため、BさんとCさんはすぐにでも売りたい気持ちがありました。そんなに時間をかけているわけにはいかなかったのです。

 

賃借人が1人だったことが不幸中の幸いでした。結果的に建物を解体・撤去することができたのです。もし賃借人が複数存在したり、アパートやマンションのように部屋が複数あるケースでは、解体・撤去は非常に難しかったでしょう。

 

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(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

ただ賃借人が亡くなり、その遺族も相続放棄をしてしまったため、BさんとCさんら相続人が、撤去や解体費用などおよそ500万円を負担することになりました。かなりの追加費用が発生してしまったわけです。

 

一方で、我々は事故物件の取扱い経験も豊富なため、事故物件サイトに掲載されることもなく、当初の売値の5%ダウン程度で、うまく買い手を探すことができました。

 

このような心理的瑕疵に該当する場合には、告知義務がありますので、告知せずに売却・賃貸するのは難しく、売価あるいは賃料をある程度低くする必要があります。不動産は簡単なようで奥が深く難しい…そんな出来事でした。

 

 

江幡 吉昭

株式会社アレース・ファミリーオフィス代表取締役

一般社団法人 相続終活専門協会代表理事

 

本連載に記載されているデータおよび各種制度の情報はいずれも執筆時点のものであり(2020年7月)、今後変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。

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