新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

「働き方改革」は1995年から始まっていた

生産年齢人口が減少へと反転する中で、人々のライフスタイルも大きな変化を遂げていきます。

 

1997年、これまでの社会の価値観であった「男は外で働き、女は専業主婦として家庭を守る」という構図がひっくり返ったのです。日本における「専業主婦世帯」と「共働き世帯」の世帯数は、95年を境にその数は逆転しています。日本でも夫婦が一緒に働き、子育てをする家族形態が、「主流」となったのでした。

 

この流れの背景となっているのは、1985年に制定された男女雇用機会均等法が、97年に一部改正されたことです。この改正では、女性保護のために設けられていた時間外や休日労働、深夜業務などの規制が廃止されたのです。今は「働き方改革」の旗印の下、「深夜残業」も「時間外・休日勤務」も抑制しようという動きになっていますが、当時は女性も男性と同じように社会の一線で働くことが求められる時代だったので、まずは男性と同じ立場に女性を位置づけることに重点が置かれたのでした。

 

また一方でバブル崩壊によって今までのような好景気を期待できなくなった家庭は、男女関係なく深夜も休日も働かなければ家計を維持していけないような環境にあったともいえます。

 

企業内における働き方にも、大きな変革の波が押し寄せます。それまでは、会社における資料作成は、その多くが手書き、もしくはワープロを使うものでした。男性社員が作成した手書きの資料を、女性事務社員が受け取って、きれいにワープロで仕上げるといった、今思えばおそろしく能天気なスピードで仕事は行なわれていました。

 

私は1980年代の後半、ボストンコンサルティンググループという世界有数のコンサルティングファームに勤務していましたが、当時でさえ徹夜して仕上げたプレゼン資料は、ロジックを組み上げた膨大な枚数の手書きのシートと、そこに貼り込む図表をアップルコンピューターで作図したものをプリントアウトして、そのまま秘書に手渡していました。

 

秘書はこれらの図表をハサミで切り取って、ワープロにはめ込み、美しいプレゼン資料に仕上げるというのが仕事だったのです。私たち若手社員にとっては、この作業を行なうおねえさんの機嫌を損ねたら大変なことです。締め切りが迫る案件であればあるほど、彼女たちとの日頃からのコミュニケーション能力が問われる、そんな仕事スタイルだったのです。

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