本記事は、山田知広税理士の著書『オーナー社長のスゴい引退術』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

「父が倒れました」と、息子さんから電話が…

私のほうでD社の情報を集めて企業分析をしましたが、健全な会社であり、将来性もありそうでした。C社の社長にD社のことを伝えると大変喜んで、「ここなら、うちの会社を大事にしてくれる」と身を乗り出してきました。

 

条件交渉は概ね問題なくスムーズに進んだのですが、ただ1つ、やはり土壌汚染のリスクについては再三価格の検討依頼がありました。

 

土壌汚染のリスクについて、そもそも私もこの点を考慮して、当初1億円という査定額を付けていましたが、8500万円の提示額にしたのです。

 

そこで再度C社の社長と相談をしました。確かに不動産の純資産と少し出ていた利益を考えると8500万は妥当な金額でした。しかし、万が一土地に問題があった場合には賠償金額は青天井となります。本工場用地では個人では使いにくく、売却しても足元を見られてしまう可能性が十分ありました。ここは相手の要望に合わせて8000万円で手を打ってはどうだろうか……と悩みました。

 

結局、すぐには決まらず、持ち帰ってお互いに検討することになりました。

 

それから2週間後のことです。急にC社社長の息子さんから私の携帯に電話がかかってきました。息子さんからの電話は初めてでしたので、「これは何かあったな」と直感しました。

 

案の定、「父が倒れました。会社のことで相談したいと言っているので来てもらえませんか」とのことです。脳梗塞と診断され一時は意識がない状態が数日続いたため、万が一を心配しました。買収先の社長にも事情を伝えましたが、今は見守ることしかできません。

 

入院は1ヵ月続きましたが、C社社長は無事退院されて、奇跡的に会話もできる状態に回復されました。再度M&Aの交渉のスタートし、基本合意後に簡易なDD(デューデリジェンス)を行い、結局8500万円で決まりました。

 

一時はどうなるかと思いましたが、こうしてM&Aを開始してから1年半で、廃業目前のC社は8500万円という高値で売れていったのです。

次ページC社はどうして高値でもスムーズに売れたのか?
オーナー社長のスゴい引退術

オーナー社長のスゴい引退術

山田 知広

幻冬舎

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