良い「三為業者」、悪い「三為業者」
不動産の売買取引の現場では、時々「三為業者」という用語が出てくる。「かぼちゃの馬車」オーナーたちの多くは、この三為業者が関係した土地取引によって、相場よりもかなり高い金額で購入した。三為業者とは、所有権の移転の実態を反映していない「中間省略取引」において、特約として、所有権が最初の所有者から最終購入者に直接移転する旨を定める契約「第三者のためにする契約」を積極的に行う業者のこと。この「中間省略取引」自体は合法であり、不動産売買取引を効率的に進める方法の一つだ。
本来なら不動産の所有権が「最初の所有者から購入者X」、「購入者Xから最終購入者」へと移転した場合、不動産登記簿に2回の移転登記が記載されるべきだが、中間省略取引では、当事者全員の合意があれば、「最初の所有者から最終購入者への所有権移転登記」という1回の移転登記のみを申請し、登記することが可能となる。この契約の特色は、Xが最初の所有者から購入した金額を転売先である最終購入者に知られることがない点だ。
オーナーの代理人として「かぼちゃの馬車」の運営会社スマートデイズの一連の販売に関与した会社などに対して、訴訟を起こした加藤博太郎弁護士の調査により、今回販売会社がかなりの利益を乗せてオーナーに販売していた実態が明らかになった。
例えば、土地所有者から約3000万円で購入した土地を販売会社の元締めA社が約5500万円でオーナーに直接営業している販売会社B社に売却し、B社はオーナーに約6000万円で販売していた。実に2倍もつり上げられた金額でオーナーは購入し、結果的に多額の借金を抱えることになった。
注目したいのは、最も利益を得ていた元締めA社。加藤弁護士は「週刊全国賃貸住宅新聞」の取材で、「元締め会社とスマートデイズ実質経営者とスルガ銀行支店長で協議が重ねられてつくられたスキームではないか」と話していた。
「投資は自己責任」とはいえ、素人では見抜くのが難しかった状況があったのも事実。「投資」という欲をビジネスとしている企業にもまた欲があるという点を理解しないといけないようだ。
永井ゆかり
「家主と地主」編集長
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