
塚崎公義がお送りする「人生100年時代の老後資金を考える」シリーズ。第18回は、公的年金の重要性について解説します。老後資金の確保には公的年金が最強であり、ぜひとも支払い続けてほしいのですが、もし手持ちの資金が尽きてしまった場合はどうしたらいいのでしょうか。支払いをやめることの問題点と、実際の対応策を合わせて紹介します。
公的年金は非常にメリットが大きい制度
老後資金を考えるとき、最も大きなリスクは長生きとインフレです。どちらか片方でも老後資金が底を突いてしまうリスクとして深刻ですが、長生きしている間にインフレが来れば、いくら貯金があっても足りないかもしれませんね。
だからこそ「老後資金は全額を銀行預金にしないで、株式や外貨といったインフレに強い資産も持ちましょう」という話の流れになるわけですが、それ以上に重要なのが「公的年金を大事にする」ということなのです。
公的年金は、どれほど長生きしても支払ってもらえますし、インフレが来ても原則としてインフレ分だけ支給額が増えますから、とても安心なのです。
公的年金は現役世代から集めた保険料を高齢者に配るという「賦課(ふか)方式」なので、早死にした人に払わない分だけ、長生きした人にはいつまでも払うことができますし、インフレが来れば現役世代の給料が上がるので、集める保険料を増やして高齢者に配る金額を増やせばいいわけです。
少子高齢化が進むと、少数の現役世代から集めた保険料を多くの高齢者で分け合うことになるため、1人当たりの高齢者の受取額が減ってしまうと予想されていますが、これについても筆者はそれほど心配していません。
「最近の高齢者は元気なのだから、70歳まで働いて生活費を稼ぎ、70歳から年金を受け取ればいい。そうすれば毎回の受取額が42%増えるので、生活できるはずだ」と考えているからです。この点については、有料記事で恐縮ですが、ご興味があれば拙稿『公的年金受給「70歳開始」で老後不安の多くが解決できるワケ』をご参照いただければ幸いです。
自営業者は「自分の意志」で年金を払わないと大変
サラリーマン(女性、公務員等を含む。以下同様)は、年金保険料が給料から天引きされるので、若いときにはとくに「公的年金を大事にしよう」と考える必要はありません。65歳になった時点で「年金の受取開始を70歳まで待って毎回の受取額を42%増やす」といったことを検討いただく必要はありますが。
サラリーマンの配偶者である専業主婦(または専業主夫)は、配偶者が給料から厚生年金保険料を引き落とされることで、自分も払ったという扱いにしてもらえるので、自身が保険料を支払う必要はありません。この制度自体が不公平だ、といった問題はありますが、本稿ではその点は論じないことにしましょう。
問題は、それ以外の人々です。自営業者等々は、年金保険料を自分で支払いに行く必要があり、支払わないと老後の年金が受け取れません。したがって、「公的年金を大事にしよう」という話は、「年金保険料をしっかり払おう」という意味にもなるわけです。
