新規開拓より「既存顧客にとにかく買わせる」悪習が…
一方の顧客は、取引が増えれば増えるほど、手数料が差し引かれていくことになります。営業員の言いなりになって、こんなことばかり繰り返していたら、顧客の資産はみるみる擦り減っていくでしょう。
取引を増やすのであれば、顧客に入金してもらい、新しい投資をスタートさせればいいのですが、そう易々と顧客もニューマネーを投入する気にはなれません。たいした投資成績を出せていなければなおのことです。
証券会社が新規開拓に力を入れればいい話なのかもしれませんが、新しい顧客を確保するのは並大抵のことではありません。そこに期待するよりは、今いる顧客を相手に取引をしたほうが確実にノルマを達成できるので、営業員は既存の顧客に片っ端から声を掛けるわけです。この時、営業員は顧客の儲けはほとんど考慮に入れず、ノルマのことで頭がいっぱいのことでしょう。
証券会社に蔓延するこのような体質は、前述したダマ転をしていた頃となんら変わっていません。結果、なんでも言うことを聞いてくれる顧客ほど、莫大な損失を抱えてしまうのです。
■実は売れ筋を売っているだけ
証券会社だと儲からない理由のもう一つとして、旬な商品しか勧めない点も挙げられます。金融に限らずどんな商品でも、誰もが興味を持つような話題性の高いものを販売すれば、相応の反響が期待できることでしょう。
しかしそれらの商品というのは、人気になっている時点でプレミアが付いていると考えることができます。つまり、本来であれば100の価値のものが、110や120になって売られている可能性があるわけです。割高感があり、この時点で買った人が大きな利益を出せる見込みは低くなります。
実際私が証券会社に勤めていた頃を振り返ってみても、プレミアが付いた人気商品を購入した顧客の大多数が、結果的に損をしていたはずです。
いちばん成績のいい証券会社の営業員、言い換えるならたくさん取引を成立させている営業員というのは、トレンド追求型です。いま最もホットで旬な商品に飛びつき、売買を激しく繰り返します。