「快適なドライブ」を実現する…白内障「眼内レンズ」の選び方

研究開発が進み、多焦点眼内レンズの選択の幅が広がりました。ご自分の目とライフスタイルに合った「眼内レンズ」を選び、「若いころの快適な視界」を取り戻せる時代がやってきたのです。それぞれのレンズの特性について学び、白内障に備えましょう。 今回は、『「見える」を取り戻す白内障手術』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、「焦点深度拡張型レンズ」の説明や主な眼内レンズ、また、光がにじんだり、ギラギラしたりする現象が起こりにくい製品をご紹介します。

中間距離から遠方まで、連続してはっきり見たい方に

EDOF(Extended Depth of Focus)とは、最近登場した新しいコンセプトの眼内レンズで、日本語では「焦点深度拡張型レンズ」と呼ばれます。光を遠方と近方の2距離に振り分けていた従来の回折型とは異なり、光を遠方から中間距離までに連続して振り分けて、見える範囲を広げました。そのため中間距離から遠方まで連続してはっきり見ることができます。

 

人は一つの距離をじっと見ることもありますが、日常生活では複数の距離を瞬時に見る行為が多いのです。例えば、車の運転、街を歩くとき、旅行、ゴルフ、披露宴などの宴会・会食、役所の手続き・銀行など挙げたらきりがありません。

 

近くから遠くまで連続して見えることは快適な見え方をもたらします。手元30cmはピントがあまいことがデメリットです。

 

製品例:シンフォニー、ミニウェル、アクリバ・トリノーバ

 

【シンフォニー】

アメリカのAMO社が2017年に発売した、EDOF技術を用いた最初の多焦点眼内レンズ(2焦点)です。シンフォニーの最大のメリットは、50〜60cm程度の中間距離から遠くまで、連続してクリアに見えるという点にあります。車を運転しながらカーナビを見るなど、いろいろな距離を連続して明瞭に見ることができるのも特徴です。

 

デメリットとしては、夜間などの光のにじみやまぶしさ(ハロー、グレア、スターバースト)を強く感じるため、長時間の夜間運転には要注意です。また手元30cmはピントがあまく読書の際など、ごく近くのものを見続けるときは老眼鏡が必要となることが多いです。

 

AMO社
シンフォニー(米国 AMO社)

 

【ミニウェル】

イタリアのSIFI-MedTech社が開発した累進焦点眼内レンズ(progressiveIOL)と呼ばれるEDOF眼内レンズです。唯一球面収差を利用した多焦点眼内レンズで遠方・中間・近方まで落ち込みの少ないスムーズな見え方を実現し最も自然に見えます。ハロー、グレア、スターバーストがほとんどなく夜間運転にも向いています。

 

ミニウェル(イタリア SIFI-MedTech社)

 

 

デメリットとしては手元の見え方が人により違うことが挙げられます。

 

40〜50歳代の比較的若い方は、手元30cmまでよく見える傾向があります。逆に、高齢の方は手元の視力が不良な傾向があります。また、支持部が弱く、術後近視化することがありますので、嚢を補強する拡張子リングを挿入することが必須になります。相性が良ければ、手元から遠くまで最高の見え方になりますが、相性が悪いと思ったように視力が出ないことがあります。

 

【アクリバ・トリノーバ】

オランダのVSY Biotechnology社が2017年に発売した3焦点眼内レンズです。EDOF技術により、遠方から40cm前後の近方まで連続した優れた視界を得ることができます。従来の多焦点眼内レンズが鋭角な溝を持っていたのに対して、光学部の回折部分は丸みのある正弦波様の形状に工夫されています。これにより従来の回折型レンズの欠点であるグレア、スターバーストがほとんど無くなりハローも軽減されました。

 

焦点深度を広げるEDOFタイプであるため、遠方、中間、近方がよりナチュラルに見えるように設計されています。

 

VSY Biotechnologyより
アクリバ・トリノーバ(オランダ VSY Biotechnology社)

 

ただし、中間用として1.5D、近方用として3.0Dが加入されていて、30cmのピントはあまく遠方から40cmまでがクリアに見えるレンズです。眼内レンズが多少傾いても問題ないとされています。光利用率は他の回折型多焦点レンズよりも高い90%でクリアに見えます。スポーツをされる方、運転をされる方など活動的なライフスタイルの方に向いています。

 

特筆すべきことは、これまでの3焦点眼内レンズは使用できなかった「強度近視」、「強度遠視」、「強度乱視」の方でも使える幅広い度数が用意されていることです。

夜間の長時間運転にはグレア、ハローの少ないタイプを

多焦点眼内レンズの特徴の一つに、夜間の車のライトなどがにじんで見える(ハロー)、光がギラギラして見える(グレア)、光が星のように広がって見える(スターバースト)という現象があります。これは複数の焦点をつくるために刻まれているレンズ表面の細い溝に光が反射することで生じます。

 

ハロー、グレア、スターバーストの見え方
ハロー、グレア、スターバーストの見え方

 

特に夜間の車の運転では、瞳が開きより多くの溝に光が反射するため強く感じることが多いのです。ほとんどの人は時間とともに慣れて気にならなくなりますが、人によってはその症状を苦にしてしまいます。夜間に長時間運転をする人は、多焦点眼内レンズのなかでも、グレア、ハロー、スターバーストが起こりにくい製品を選ぶほうが疲れにくくて良いと思います。

 

製品例:ミニウェル、トリノーバ、アクティブフォーカス

 

【ミニウェル】

EDOFの例として先述したミニウェルは、多焦点眼内レンズのなかで最もハロー、グレア、スターバーストが少ないレンズです。その理由はミニウェルは色収差を応用して焦点深度を拡張する技術を用いている唯一の眼内レンズであるため、レンズ表面に溝が無いことにあります。

 

 

ミニウェル(イタリア SIFI-MedTech社)

 

夜間の光も、生体に備わった水晶体に近い見え方になるので、夜間に運転をすることがある人にはお勧めです。また照明の少ない室内などの薄暗いところでも、良好な視力が得られます。詳細は【EDOF】での紹介文を参考にしてください。

 

【トリノーバ】

【EDOF】や、前回記事(「メガネ不要」の暮らしが実現…「3焦点眼内レンズ」の特性 )でもとりあげた多焦点眼内レンズです。鋭い鋭角の溝がなく波のようなゆるやかな構造であるため夜間の光がぎらつくグレア、スターバーストはほとんどなく、光の周囲が輪のようににじむハローが少なめに存在し、夜間に車を運転する方にも安心して使用していただけます。

 

VSY Biotechnologyより
アクリバ・トリノーバ(オランダ VSY Biotechnology社)

 

【アクティブフォーカス】

以前取り上げた(白内障手術…「左右の目に違う眼内レンズ」がオススメのワケ)、「遠方―中間」タイプ2焦点眼内レンズです。溝が少ない上に深くなく周辺に行くほど浅くなるためグレアが目立たずやや弱めのハローがあるだけで夜間運転する方に向いています。

 

Alcon社より
アクティブフォーカス(日本 Alcon社)

 

 

板谷 正紀

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。
埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

▼はんがい眼科の公式ブログ「目のブログ」▼
https://eyeblog-hangai.com/
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著者紹介

連載近くも、遠くも、快適に…「見える」を取り戻す白内障手術

「見える」を取り戻す白内障手術

「見える」を取り戻す白内障手術

板谷 正紀

幻冬舎

レーザー白内障手術は、安全・快適・短時間に「見えない」という病気状態を解決し、「見える」を取り戻し、さらに快適に見えるを手に入れるまでに進化しました。この本では、進化した多焦点レンズ、レーザー白内障手術の最新情…