
娯楽や医療など、あらゆる分野で活用が進む「3D技術」。多くの人にとって最も身近な例は「3Dメガネ」でしょう。世間的には映画鑑賞に使うものという印象が強いですが、実は医療の現場でも大活躍しています。年間1,500件の白内障手術を手掛けるスゴ腕ドクター佐藤香氏が、眼科の最新情報を解説する本連載。今回のテーマは「3D手術」です。※本記事は、アイケアクリニック院長の佐藤香氏の語り下ろしによるものです。
娯楽にとどまらず、医療分野にも応用される「3D技術」
突然ですが、3Dメガネを使ったことはありますか? 最近ですと、3Dメガネをかけて観る映画なんかもありますよね。立体的でより迫力のある映像が楽しめるので大人気です。
そんな3D技術が眼科の世界でも利用されていることをご存じでしょうか。最近の眼科医は、手術のときにこのメガネをかけるんですよ。

もともと、眼科の手術は顕微鏡を覗きながら行うことが普通でした。目は小さな部位ですが、奥行きがあり、ボールのような形をしています。立体的に捉えながら手術を進めるために顕微鏡を使っているんです。
今の時代は、様々なものがデジタル化されていますよね。目の手術もその影響を受けていて、最近では顕微鏡に代わって3Dメガネと大型モニターを使う時代に突入しつつあるんです。
執刀医にも患者にも大きなメリット
大型モニターに3D画像を映し出すので、顕微鏡よりも非常に見やすいんです。いっそうはっきりと立体的に見えるので、以前にも増して正確で安全な手術が可能になりました。また、デジタル処理された映像なので、見たいものを鮮明に引き出すことができます。そのため、顕微鏡で直接リアルな目を覗くときよりも工夫しながら手術を進められます。このように、ただ手術がやりやすくなるだけでなく、パフォーマンスまで向上させられるんです。
また、モニターを使えば患者さんに負担をかけることなく光の調整が可能です。今までの手術の場合、目の状態をしっかり見るためには、患者さんに直接強い光を当てる必要がありました。
もちろん非常に眩しくて辛いので、医師が顕微鏡をのぞいた瞬間、患者さんが「うわっ」と目をそらしてしまいます。そうすると手術ができないので、我慢してくださいね、眩しいところを見てくださいというやり取りを繰り返していました。
3Dメガネとモニターを使うようになってからは、患者さんに負担をかけることなく光量調節できるようになりました。手術を受ける側にとっても、行う側にとっても大きなメリットです。
ほかにも、術者の身体的な負担が減ったことが挙げられます。顕微鏡を長時間覗いていると、やはり首や肩、腰に負担がかかってしまいます。そういう状況でずっと集中しているとどうしても疲れやすく、手術時間が長引いてしまうこともありました。
しかし大型モニターと3Dメガネを導入してからは身体の負担が減り、より多くの手術をスピーディに行うことが可能となりました。
より多くの患者さんが手術を受けられるようになり、しかも短い時間で終わるというのは、患者さんにとっても大きなメリットですよね。