新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産で知る日本のこれから』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産を通して日本経済を知るヒントをお届けします。

不動産を買うには「地歴」が大切な理由

2000年以降に建設されたマンションの多くが、東京五輪以降は築20年を超えて大規模修繕の時期を迎える。外壁の修繕には足場が組めないために、屋上からゴンドラを吊り下げての工事になるが、湾岸部で高層建物ともなれば、上空は常に風が強く作業日は限られ、工期は通常マンションの数倍かかるといわれる。

 

多くのタワマンでは大地震等での停電に備え、非常用発電装置が備えられている。

 

いざというとき安心の設備であるが、これも経年劣化が激しい。築15年から20年程度で交換するにあたっては、1基数千万円から1億円の負担となる。

 

牧野知弘著『不動産で知る日本のこれから』(祥伝社新書)
牧野知弘著『不動産で知る日本のこれから』(祥伝社新書)

また、メンテナンスをしっかりと施さないと、その「いざ」というときに役に立たない。あるビル会社が東日本大震災の後、運営管理しているビルの非常用発電装置を実際に動かしてみたところ、多くの設備が規定通りの時間作動することがなかったという。それだけメンテナンスが難しい設備であるということだ。

 

タワマンに装備されているエレベーターは、超高速のもので、高性能であるぶん、更新する場合には大変な金額となる。普通のマンションのエレベーターがプリウスなら、高層用のものはポルシェのような差があるのだ。

 

今後、これらの問題をすべて負っていくのは、分譲したデベロッパーではなく、一人ひとりの所有者なのである。

 

築地市場の移転問題で、すっかり負の話題を提供されてしまった東京の豊洲であるが、豊洲に限らず、タワマンが林立する土地の多くは埋め立て地で、しかも以前の工場や倉庫などの跡地だ。大地震が発生したときは、多くの土地で液状化現象が生じることが予想される。

 

液状化で地下から噴出する「液」というと、あの豊洲市場の地下水を連想する人が多いのではないだろうか。自分たちがどんな土地の上に住んでいるのかも、クローズアップされるのだ。

 

実は昔からの東京人で、湾岸エリアのタワマンを買う人は少ない。このエリアの以前の姿をよく知っているからだ。お台場が東京だと憧れる、「東京を知らない地方の人」が買うのがタワマンなのである。

 

不動産を買うには、地歴が大切だ。地歴とは、昔その土地に何があったのか、どんな歴史が潜んでいるのかを語る重要な資料だ。タワマンは地歴で買うには「お買い得」ではけっしてないのである。

 

牧野 知弘

オラガ総研 代表取締役

 

不動産で知る日本のこれから

不動産で知る日本のこれから

牧野 知弘

祥伝社新書

極地的な上昇を示す地域がある一方で、地方の地価は下がり続けている。高倍率で瞬時に売れるマンションがある一方で、金を出さねば売れない物件もある。いったい日本はどうなっているのか。 「不動産のプロ」であり、多くの…

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