日本には「知らぬが仏」という言葉がある通り、秘密にすることによって穏便に事を済ませようとする文化がありますが、相続が発生すると状況は一変します。隠しごとが原因で、家族がお金の問題や人間関係のトラブルにいきなり直面することになるのです。隠しごとの処理はひとりで悶々と考えていてもどうしようもありません。本記事では、自身の死後の事務作業を委託することのできる「死後事務委任契約」について取り上げます。

「死後事務委任契約」とは?

これは死亡後に発生する事務作業について、元気なうちに委託する契約を結んでおくものです。行政書士や弁護士なども引き受けていますが、領収書などを預けることが多く、日ごろから頻繁に付き合っている税理士の方がオーナー社長にとっては何かと便利だと思います。

 

ただし、金融機関への対応などでは、弁護士しか受け付けない金融機関もあるようなので、その処理の内容によって使い分けた方がいいようです。死後事務委任契約で引き受けてもらえる業務の範囲は広く、遺言書ではカバーできないことも頼めるため便利です。

 

契約の中に各種書類の処分を入れておけば、適切に処理してもらえます。たとえば遺族にとって、悲しみの中で葬儀の手配や公的機関などへのさまざまな手続きをすることは大きな負担です。

 

悲しみの中でさまざまな手続きをすることは大きな負担だ。
悲しみの中でさまざまな手続きをすることは大きな負担だ。

 

死後事務委任契約を結んでおけば、そういった苦労を大きく軽減することができますし、委任された人が契約に基づいて間違いなく希望通りに手配してくれるので安心です。

遺族が賠償責任のケースも? 訴訟は生前に処理を

筆者が知っている隠しごとの中には「妻に訴訟を隠していた」というケースがあります。本業の経営は好調だったのですが、ちょっとした不手際から損害賠償を求めて取引先から訴えられたのです。

 

訴訟の中には判決が出るまでに何年もかかるものがあります。その間に社長が亡くなってしまうと、隠していた裁判のことが遺族にわかってしまいます。注意しておきたいのは、役員への代表訴訟など大きな金額の訴訟の場合です。

 

代表訴訟提起後、判決が確定する前に役員が亡くなった場合、遺族が賠償責任を負うこともあり得ます。役員賠償責任をカバーする保険に入るなどの対応が有効ですが、妻や子供たちのために、訴訟などの面倒ごとはできる限り生前に処理しておくか、和解できるよう譲歩するのがおすすめです。

 

訴訟と似たケースでは、所有する賃貸物件についての面倒なもめごとを隠している社長もいました。妻が反対する中、ワンルームマンションを一棟買いしたところ、賃料を支払わない入居者が何人かいたというお話でした。そのことが妻にばれないよう、本業からお金を融通して誤魔化していました。

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妻に隠しごとがあるオーナー社長の相続対策

妻に隠しごとがあるオーナー社長の相続対策

佐野 明彦

幻冬舎メディアコンサルティング

どんな男性も妻や家族に隠し続けていることの一つや二つはあるものです。妻からの理解が得にくいと思って秘密にしている趣味、誰にも存在を教えていない預金口座や現金、借金、あるいは愛人や隠し子、さらには彼らが住んでいる…

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