白内障になったら、知っておくべき「多焦点眼内レンズ」の特性

研究開発が進み、多焦点眼内レンズの選択の幅が広がりました。ご自分の目とライフスタイルに合った「眼内レンズ」を選び、「若いころの快適な視界」を取り戻せる時代がやってきたのです。それぞれのレンズの特性について学び、白内障に備えましょう。 今回は、『「見える」を取り戻す白内障手術』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、多焦点レンズの特性(メリット・デメリット)について解説します。

ハローグレアってなに?

白内障手術を受けると決めたとき、最初に悩むのは「単焦点眼内レンズにするか、多焦点眼内レンズにするか」の選択です。

 

単焦点眼内レンズは、ピントの合う位置ではコントラストの高い鮮明な見え方であることが最大のメリットですが、明視域が狭く、ピントの合わない距離はぼやけてしまい不便に感じてしまいます。このデメリットを解決するのが多焦点眼内レンズです。

 

生活の様々な場面において、明視域が広いことはとても重要です(関連記事:高齢者の白内障手術…なぜ「多焦点レンズ」を選ぶべきなのか)。メガネを使わず広い範囲がはっきり見えることのメリットはとても大きいです。

 

ただし、多焦点眼内レンズ特有の問題点も理解した上で選択することが大切です。多焦点眼内レンズを選択された当院の患者さんのほとんどは満足されていますので、自信を持ってお勧めしていますが、角膜の異常(不正乱視、高次収差)や性格(神経質なこだわり)によっては合わない場合もあります。目をよく調べ、主治医と話をして選択することが大切です。以下に、知っておいていただきたい多焦点眼内レンズの特性を挙げます。

 

①コントラストの低下:多焦点眼内レンズは、単焦点眼内レンズに比べコントラストが低下するとされていますが、その程度はレンズによりさまざまです。なかには、単焦点眼内レンズと遜色ないコントラストを持つ多焦点眼内レンズもいくつか存在します。比較しないと気がつかないような差ですので、すでに白内障により視力が落ちている方は、コントラストが低いとは思いません。

 

問題は「白内障がごく軽度で、矯正視力も良くコントラスト検査でも正常だが、老眼を治したいと思って多焦点眼内レンズ手術を選ばれる」場合です。世の中が白っぽく見える(waxyvision)と感じてしまうかもしれません。このような方は、コントラストの高い多焦点眼内レンズを慎重に選ぶ必要があります。人は脳でものを見ており、脳は比較する存在です。術前に比べてコントラストが向上することが重要なのです。

 

②ハロー、グレア、スターバースト:ハロー、グレア、スターバーストは下図のように光が見える現象です。白内障の症状でも同じ見え方をしますが、多焦点眼内レンズを使用する場合、多少なりとも、このような見え方になります。

 

ハロー、グレア、スターバースト
ハロー、グレア、スターバースト

 

通常は気にならなくても、夜間運転では瞳が開いているため目立ちます。多焦点眼内レンズにより程度やパターンに差があります。ほとんどハロー、グレア、スターバーストがないもの、弱いがあるもの、強く目立つもの、といった具合です。手元までピントが合う機能の高い多焦点眼内レンズほどハロー、グレア、スターバーストが目立つ傾向があります。同じ程度でも気になる人と気にしない人がいるのも事実です。長時間夜間運転が必要な方は、ハロー、グレア、スターバーストが少ない多焦点眼内レンズを選ぶことが多いです。

 

見え方のイメージ
見え方のイメージ

 

③得る距離もあれば失う距離もある:多焦点眼内レンズは、まず遠くにピントを合わせて、そこから光学的技術により一部の光のフォーカスを近くへ持ってくるものです。遠くから中間、手元までピントが合う3焦点眼内レンズでもせいぜい30cmまで持ってくるのが限界で20cmにはピントが合いません。

 

日本人は強い近視の方が多く、本に顔を近づけて読む癖や、鏡を顔に近づけてアイメイクをする習慣がある場合があります。多焦点眼内レンズでは30cm〜遠方の快適な視力を得る代わりに10〜20cmくらいの目もと距離の快適さを失います。新しいビジョンを得ることで生活の癖を修正し適応していく必要があります。

 

新しいビジョンに、適応していく必要がある
新しいビジョンに、自らが適応していく必要がある

多焦点眼内レンズを性能別にみてみよう

医療機関の中には、単焦点眼内レンズしか使用していないため多焦点眼内レンズの選択肢があることを伝えなかったり、特定の眼内レンズのみを使用していたりして、患者さんが眼内レンズを選べないことも多いようです。

 

当院では、できるだけ多くの眼内レンズを取り扱っています。それぞれのレンズには個性的な特徴があり、人の生活や仕事、好みに多様性があるように、多焦点眼内レンズの選択の幅が広いことは良いことだと考えるからです。

 

加入度数とは?

少し難しく感じるかもしれませんが、各多焦点眼内レンズの違いを理解するときに役に立つ知識をご紹介します。

 

多焦点眼内レンズとは、まず遠方にピントを合わせ、そこから光学的技術により手前にも光のフォーカスを持ってくるものです。どれくらい手前にフォーカスを持ってくるかという程度が加入度数で、メガネのジオプター(Diopter,D)を単位としています。

 

ざっくり説明しますと、4D加入のレンズは手元30cmくらいにフォーカスの中心があります。3D加入では40〜50cm、2.5D加入では50〜67cmにフォーカスの中心があります。すなわち、2焦点の場合は加入度数が大きいほど手元が見やすくなる代わりに、中間距離が見えにくくなるのです。また、加入度数が大きいほど、ハロー、グレア、スターバーストが大きい傾向があります。

 

 

板谷 正紀

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。
埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

▼はんがい眼科の公式ブログ「目のブログ」▼
https://eyeblog-hangai.com/
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https://hangai.org/cataract-seminar/

著者紹介

連載近くも、遠くも、快適に…「見える」を取り戻す白内障手術

「見える」を取り戻す白内障手術

「見える」を取り戻す白内障手術

板谷 正紀

幻冬舎

レーザー白内障手術は、安全・快適・短時間に「見えない」という病気状態を解決し、「見える」を取り戻し、さらに快適に見えるを手に入れるまでに進化しました。この本では、進化した多焦点レンズ、レーザー白内障手術の最新情…