20~30代の白内障手術で老眼に…原因は「眼内レンズ」!?

研究開発が進み、多焦点眼内レンズの選択の幅が広がりました。ご自分の目とライフスタイルに合った「眼内レンズ」を選び、「若いころの快適な視界」を取り戻せる時代がやってきたのです。それぞれのレンズの特性について学び、白内障に備えましょう。 今回は、『「見える」を取り戻す白内障手術』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、20~30代の白内障手術に「多焦点レンズ」がオススメといえる理由と、国内の眼内レンズの現状について解説します。

若い方が単焦点眼内レンズを選ぶと、いきなり老眼に⁉

若い方にとっても、眼内レンズ選びは非常に重要です。20〜30代でも白内障になることはありますが、若い方が単焦点眼内レンズを選ぶと、いきなり老眼になり、遠方にピントが合うレンズを選択した場合には手元が見えにくくなってしまいます。

 

誰でも年齢とともに、約20年かけてゆっくりと老眼が進みます。このため、徐々に適応していくことができるのです。しかし、いっきに起こる老眼は脳がびっくりしてしまいます。

 

なによりも、若い年代は仕事が生活の中心ですし、スポーツ等様々な趣味を持っています。仕事においては、書類、コンピューター、商談の相手の表情、会議のスクリーンなどさまざまな距離のものがはっきり見える必要があります。メガネやコンタクトでピントを合わせることはできますが、たとえば会議の時、手元の書類とスクリーンを同時に見る必要があり、メガネは不便で、遠近両用眼鏡を使うにしても慣れが必要です。

 

スポーツでは、たとえばテニスや卓球を思い浮かべてみてください。離れたところから飛んでくるボール(球)を、相手が取りにくいところを狙って打ち返すのです。テニスなら遠くと中間距離、卓球なら2〜3メートル先と手元を、瞬時に視線を移動させて見る必要があります。野球のバッティングもピッチャーから投げられ近づいてくるボールを瞬時に追わなければなりません。この瞬時の視線の移動はメガネでは難しいでしょう。

 

こうした、若い時代が当たり前に行っている行動は、老眼になると不便になってしまいますが、多焦点眼内レンズを選択すればクリアな視界を維持できます。万が一、手術していない方の目が将来白内障になった場合には、同じ多焦点の眼内レンズを挿入することで、両方の目のバランスを取ることができます。

 

若い世代の方が眼内レンズを選ぶ際には、自分の仕事とライフスタイルをよく思い返してみて、自分に最も合った眼内レンズを選びましょう。

 

球技を中心とするスポーツ、カメラや絵画などの趣味、安全な生活、人との会話などはっきり見える範囲である明視域が広いことが重要で、そうした場面がいかに多いかがわかってきました。

 

それぞれ、Sportsゾーン、Hobyゾーン、Safetyゾーン、Talkゾーンと名付けてみました。他にも、Drivingゾーン、Workingゾーンもあるでしょう。読者の皆さんも、自分の「ゾーン」を名付けてみてはどうでしょうか?

国内の眼内レンズの現状とは?

眼内レンズには、さまざまな種類があり、特性にはそれぞれ違いがあります。

 

単焦点眼内レンズは、厚生労働省の認可を受けたものだけが保険診療として使用されています。2つのアメリカメーカーと複数の国内メーカーの単焦点眼内レンズが認可されています。眼内レンズの材質、形状、表面加工などに各社それぞれの特徴があります。

 

多焦点眼内レンズは、アメリカメーカーのものが2つ、厚生労働省の認可を受け先進医療として使用されています。国内メーカーのものも存在しますが、現在ほとんど使用されていません。

 

先進医療は、眼内レンズ費用を含んだ手術費用は自費で、前後の診察・検査の費用は保険診療となります。民間医療保険の先進医療特約が多焦点眼内レンズを用いた白内障手術の先進医療費用をカバーしています。

 

多焦点眼内レンズを用いた白内障手術が先進医療の対象となるのは2020年3月で終了し、4月より選定療養に移行します。すなわち、4月以降は先進医療特約をこの手術には使用できません。

 

選定療養とは、いわば2階建てのバスで、1階が保険診療(通常の白内障手術)、2階が自費診療(多焦点眼内レンズとそれを用いる技術料)というイメージです。わかりやすい例が、病院の差額ベッドです。入院するときに、大部屋か個室かを選択します。今後は、多焦点眼内レンズは、これまでよりもより身近なものになり、白内障手術を受ける方は全員どのレンズにするか説明を受けて選択する時代に入ったのです。

 

国内認可された多焦点眼内レンズは、これまで2焦点タイプしか存在せず、選択の幅が狭いことが難点でした。その中でも最大の効果を得られるように努力をしてまいりましたが、ようやく3焦点眼内レンズが認可され、咋秋(2019年)から使用できるようになりました。

 

厚生労働省の認可を受けていないさまざまな多焦点眼内レンズがEU市場で活躍しています。ヨーロッパでは、眼内レンズの研究開発環境が整い、多焦点眼内レンズの進歩が医療制度とマッチしてきたため、ヨーロッパ各国のメーカーとアメリカメーカーが研究開発にしのぎを削っています。

 

一般に、国内認可の多焦点眼内レンズよりも性能が高く、多様性があり、選択の幅が広い点が好まれ、国内でも、患者さんのご希望に応じて、国内の輸入代理店を通じて海外から取り寄せ、自由診療として使われてきました。多様性とは、焦点のあり方、コントラスト、ハロー、グレアのでかた、性能発揮の安定性、眼内レンズの嚢内安定性などです。この多様な特性と患者さんの、職業、ライフスタイル、年齢、性格などをマッチさせることが重要です。

 

 

板谷 正紀

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。
埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

▼はんがい眼科の公式ブログ「目のブログ」▼
https://eyeblog-hangai.com/
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著者紹介

連載近くも、遠くも、快適に…「見える」を取り戻す白内障手術